※各話のメイン夢主のみ変換対応。非名前変換のサブキャラとして兄弟たちが出てくる可能性有
なまえ①→メイン夢主
なまえ②→あだ名
届かない五題
- 01.その瞳の先は僕じゃない
ヒバリちゃん! と名を呼ぶ、弾んだ声にはもう慣れた。 いつしか彼の笑顔は自分ではない誰かのものになっていて、そうやって笑う姿をただ見ているだけの哀れな自分。彼の恋愛相談……もとい、「ヒバリちゃん」が如何に魅力的であるかを熱烈に語られる、そ…
- 02.君にそんな顔させる原因はいつも彼
朝である。地下に作られた居住区において、寝覚めを良くしてくれる日光なんか射し込んでは来ないけれど。枕元に鎮座する時計と、自然と目覚めるこの体が、今が朝だと教えてくれた。 手短に、けれど手抜きではなく、最低限の用意を済ませて部屋を出る。仕事…
- 03.笑わないで、泣きたくなるから
「大丈夫だって、心配すんなよ」 その言葉が空元気だということに気づいたのは、果たしていつのことだったろうか。 防衛班の結成から程なくして、私自身平静を欠いていた自覚はある。私事ながら、無二の家族である弟の反抗期で消耗しきっていたのだ。「育て…
- 04.いつも背中を見ていた
まだ、外部居住区に住んでいた頃の話だ。 生まれ育った故郷を離れ、目の前で両親を喰われ、そして姉を失い。遺された弟2人は私が育てねばならないのだと、半ば脅迫めいた使命感に苛まれていた。 まだ10やそこらの子供だった私は、もちろん間違いだって…
- 05.指先に触れたもの
「よっす!」 背中をぼふんと叩けば、こちらの存在に気づいてはいなかったらしい彼の、命を背負う強い肩が怒る。思わず後退りするほどの機敏な動きに、ついこちらのほうが怖じてしまったのだが、当人は至っていつもの調子なようだ。「……やっぱ気合いが入る…
短編 / 次女
タツミ
- 伝えられたら?
ぴろん、と無機質な通知音が鳴り響く。差出人に表示されている名前は、恋い焦がれる幼なじみのものだった。『うっす!』から始まる文章はまさしく彼を思わせるもので、今まさに彼と目の前で話しているかのような錯覚に陥ってしまう。恋しい。彼のことが、何…
- 花言葉なんて
今日は私にとって、少しだけ特別な日だった。――いや、私だけじゃないかもしれない。タツにとっても、ブレンダンにとっても、カノンちゃんにとっても、他の隊員にとっても、特別な日。 何故なら今日が、最後だから。私たち第二部隊が、「第二部隊」として…
- また、なんだ。
――大車ダイゴによるアラガミテロが収束して、数ヶ月が経とうとしていた。 サカキ博士主導のもと行われるようになった慈善活動も、もちろん第一部隊のみならず、他部隊も積極的に参加している。 防衛班第二、第三部隊も例外ではなく、特にはこの活動に精…
- 私が死んだ日
『おまえまで居なくなったら、俺は――』 そんな、遠い日の一言が頭のなかで木霊する。理由はわからないところであるが、もしかしたらこれは“予感”だったのかもしれない。 これから、とんでもなく恐ろしいことが起こる――そんな、予感だ。「思ったより元…
- それであったとするならば
「何にも、なくなっちゃったね」 目に見えて落胆する背中に投げかけた言葉は、果たしていつも通りを取り繕えただろうか。激務と苦痛と絶望に喘ぐ体を叱咤して、ここまで来たというに。 備えつけのベッド、ソファ、何も貼られず真っ白なはめ込みの窓。マルコ…
- 空と祝いとオレンジと
「ヘイ、お待ち。こちらいちごのタルトでーす」 かたん、という小気味良い音ともに置かれた皿には、上等な出来のいちごタルトが盛りつけられていた。 ぴかぴかに磨かれた真っ白の皿とつやつやのいちごが織りなすコントラストは絶妙で、さっくりと焼き上げら…
- 深呼吸だけ挟ませて
今日は防衛班がサテライト拠点の防衛任務から帰ってくる日だ。 はこの日を楽しみにしている。幼なじみであるタツミはもちろん、長いこと任務を共にしていた防衛班の面々と顔を合わせることができるから。 彼らがどんなアラガミを討ち、どうやってその身を…
- 青さとは、
「タツ~! おかえり!」 数ヶ月ぶりに極東支部の敷居をまたぐ。半ば実家のようでもあるこの景色は何年経っても変わらない……ことはないが、いつだって俺に帰還の安堵感と、生への実感を与えてくれた。行き交う人が増えても減っても、ここはきっと、俺らに…
- かつての彼女のままだった
の誕生日を祝うのは、嗚呼、果たして何度目になるだろうか。 今までの人生でずっと隣にあったはずの、いやに小さくて細い肩。何があっても傍にいてくれた彼女がいつしかそこにいなくなったのは、別に彼女が心変わりしたとかではなく、他でもない自分の変化…
- ブラックホール
ふ、と青い空を見上げる。抜けるようなそれは遥か遠くまで続いていて、このまま真っ逆さまに飛び込んでいけたらと思わずにはいられなかった。 この青い空を、まるで魚のように泳げたら。そうすればきっとこんな鬱屈した毎日から抜け出せて、危ぶまれること…
- 夕暮れはすぐに終わりを迎える
愚者の空母から見る夕焼けは、なぜだかいっとう物悲しく見える。空の色なんてどこから見てもそれほど変わりはないだろうに、どうして場所が違うだけでこんなにも見方が変わるのだろう。 ノルンで探せばわかるのだろうか。あのデータベースには生活の知恵か…
- 自分たちであれば
「タツってさ、誕生日にやりたいこととかあったりするの?」 からの出し抜けな問いかけに、タツミは大きく目を見開いて考え込んだ。彼の瞬きに呼応するようにして、照明がぱちんと音を立てる。 言われてみれば確かに、誕生日にやりたいことなんてあまり考え…
その他
- バカな女だ
「俺、やっぱあいつのこと苦手だわ」 世評通りの絶妙な乾燥感と耐え難い味わいを持つ、ここ数年で最高に激マズだと名高い配給品をエントランスにてつまみながら、正面に座るカレルへと話を投げかける。口振りからなんとなく察するに、今シュンが話している相…
短編 / 長男
アリサ
- もだもだ・一二三直線
「おれ、あんまり恋愛とかよくわかんないんだけどさ」 出し抜けな言葉を受け、アリサは手放しかけていた意識を無理やり引き戻した。声の主は隣に座るだ。珍しくムツミが不在のカウンター席にて、食材が積まれた棚の向こうに何かを見ている。 欠伸をかみ殺し…
- 好きだ!
胸が苦しい、気がした。ほんの少し前まではただの友達だった彼女を、ただの仲間で、同僚で、かけがえのない、ナニカだった彼女を見るたびに、胸がぎゅうっと押しつぶされるような感覚に陥る。ふわりと風に揺れる豊かな銀髪も、意志の強い花色の瞳も、柔らか…