04.いつも背中を見ていた

 まだ、外部居住区に住んでいた頃の話だ。
 生まれ育った故郷を離れ、目の前で両親を喰われ、そして姉を失い。遺された弟2人は私が育てねばならないのだと、半ば脅迫めいた使命感に苛まれていた。
 まだ10やそこらの子供だった私は、もちろん間違いだっていくつも犯して、何度だってぶつかり合ったし、出来ないことばかりだったし、2人を守っていくのに必死で、どんどん身を削っていたのだと思う。「私はお姉ちゃんなんだから」そんな呪文を自分に言い聞かせ、なんとかその場に立っていた。
 まだ幼くって子供の私なんか、余裕のない大人に虐げられてばかり。配給品を無事に家まで持って帰るのがやっとだった。
 それでも私が、私たちがなんとか挫けずに生きてこられたのは、他でもない幼なじみが居てくれたから。ハルは最年長で、なんだかんだで顔が広かったから年上のお姉さんや、おばさんのアドバイスを受けることが出来たし。逆に最年少だったテルが居てくれたことで、弟たちにも年上であると自覚が生まれたのだと思う。
 そして他でもないタツは、私のことを引っ張ってくれた。うつむく私を日向に連れて行ってくれたのが彼。泣いてる私を慰めてくれたのも彼。迷う私の手を引いて、正解と言えるかはわからないけれど、より良い道へと導いてくれたのが彼だ。彼の背中を追いかけて、今まで私は生きてきた。
 私は、恩を返したい。私を、私たちを救ってくれた幼なじみに、私たちを生かしてくれた幼なじみに。掬い上げてくれた彼らのためなら、きっと私はなんだって出来る。生きることだって、死ぬことだって。
 だからこうして、頼りなくうなだれる彼の背中に、そっと寄り添える自分でありたいと。私は、「私」を取り繕うのだ。