伝えられたら?

 ぴろん、と無機質な通知音が鳴り響く。差出人に表示されている名前は、恋い焦がれる幼なじみのものだった。
『うっす!』から始まる文章はまさしく彼を思わせるもので、今まさに彼と目の前で話しているかのような錯覚に陥ってしまう。恋しい。彼のことが、何よりも。
 メールの文面は何の変哲もないただの日常話だけれど、それでも私にとっては蜜のようなものだった。何てことない電子的な文字の羅列であろうと、彼が私のために送ってくれたものならば。それだけでもう私の心は、彼を想って止まらなくなる。
 いつだって、どんなときだって私の気持ちは変わらない。彼を愛しく想うこの気持ちだけは、誰にだって譲れない。
 ただひとつ変わったことといえば、その彼がここにいないことだろうか。ずぅっと一緒にいてくれた彼が、今はここにいないんだ。私のどこかスースーする隣を、溝を埋めてくれるのは、いつだって彼でしか有り得ないのに。
 ――そんな取り留めもないことを、彼への返事を打ちながらぼんやり考える。告げないと決めたこの想いを、私はどうすればいいのかな。伝えて困らせるのなら、今の関係を壊してしまうのなら、いっそ閉じ込めて隠してしまおうとした。想われたいとは思わない。けれどくすぶるばかりのこの心は、時に私を蝕んで。
「……さみしい」
 そのたった4文字を、伝えることができていたなら。私のこれからの運命は、ほんの少しだったとしても、変わってくれたりしたのかな。