絵物語と君の愛
※夢主が妊娠してる「ねえ、クロード。このあいだ……そう、ヒルダがセテスさんと一緒に作った寓話の話、聞いた?」 ふ、と。丸くなり始めた腹を撫でるが、傍らで読書に勤しんでいるクロードへと問いかける。伏し目がちに微笑む彼女は子を宿して早数節、立派…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード)
ほろほろ、ほろり
※本編後、inパルミラ 「あれ、クロードくんそれどうしたの?」 ちょん、とおのれのまぶたをつつきながら口を開いたのはヒルダだった。 化粧に彩られた桃色の瞳には何の異常も見られず、相変わらずの愛くるしい目でもって眼前にある人間を見つめている。…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード)
月夜にひびく揺籃歌
すう、すう。規則的な呼吸を繰り返す寝顔は、陽の下で見るよりいくらかあどけないように見える。 月光に照らされた白い頬を指先でなぞり、クロードは小さく息を吐いた。よくもまあこれほどぐっすり眠れるものだと、連れ添って一年と少しの月日が経とうとい…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード)
大海原と波の色
「あなたは、私の知らない世界をたくさん見てきたのね」 何気なく溢したであろうそのひと言が、なぜだか深く突き刺さった。遠く広がる海を見つめる瞳はまるで視界を写したようにゆらゆらと揺れていて、なんとなくあのたゆたう波のように、どこかへ消えてしま…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード)
幾度も夜明けを越えた先
彼女が毎晩、名残惜しそうに目を閉じるのを知っている。それは別に幼子の駄々っ子にならうものではなく、ただひたすら闇に落ちるような不安を覚えているからだろう。 以前、なんてことない談笑の合間にて、が「あなたがどこかへ行ってしまうのが怖い」と溢…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード)
まどろみと熱
寝台の軋む音で目を開ける。だるい首を少しだけ横に傾けると、そこにあったのは縁に腰掛けてひと息つくクロードの背中だった。薄ったい背中には実地訓練や課題で負った傷がいくつもあって、改めて見てみるとこれは確かに未来の同盟を背負うもの、次期盟主の…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード)
たちまちすっかり和らいで
※ゆる世界観の現パロ---『――クロードくん、ちゃん! おまたせー、ヒルダちゃんが迎えに来たよー』 インターホン越しに明るい声が聞こえてきたのは、元日の昼過ぎのことだった。モニターを覗くとそこには見知った顔があって、相変わらずの可愛らしさに…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード/パロ系)
心根の記憶
※転生パロ--- 目が覚めたとき、眼前に広がっていたのは見たこともない部屋だった。 床も天井もまっしろなこの部屋に、クロードとの二人はぼんやりと立っている。他にあるのは中央部に鎮座するちゃちな造りの机と、見るからに怪しげな十本の小瓶――そし…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード/パロ系)
広がる空と紅の色
※現パロ--- なあ、オレンジデーって知ってるか――その一言で始まった習慣は、今年で果たして何回目になるだろう。 正直なところ、オレンジデーというイベントについてはあまり馴染みがなかった。名前くらいは聞いたことがあるな、というくらいで、よも…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード/パロ系)
いつかでもしもの4月1日
※現パロ 「――子供ができたの」 随分と久しい二人きりの昼食に舌鼓を打っていた頃、不意に告げられたのはのとんでもない言葉だ。抑揚のない声で発せられたそれは、談笑もそこそこに和やかな雰囲気を保っていたリビングを一瞬で静かにした。 うつむきがち…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード/パロ系)
日曜のさんじ
※現パロ べちょ。ずるん、ぬるり。 無様な音を立ててテーブルの上に落ちたそれを、は渋い顔をして見下ろした。ついさっき綺麗に磨いたばかりなのに、よもや早速汚してしまうだなんて一体どうしたことなのか。 透明ながらもずるずると滑り、紙一重で箸を…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード/パロ系)
手繰りし緒の先にあり
※転生パロ 夢に見るほど恋い焦がれた、たった一人の女がいる。 それはどことなく朧気で、けれどもひどく鮮烈ないつかの記憶がもたらしたものだった。和気あいあいとした学び舎、二人だけの逢瀬、血なまぐさい戦場、やっと掴めた細い手。そのどれもがこの…
ファイアーエムブレム 三日月の裏側 短編(クロード/パロ系)