文章

絵物語と君の愛

※夢主が妊娠してる「ねえ、クロード。このあいだ……そう、ヒルダがセテスさんと一緒に作った寓話の話、聞いた?」 ふ、と。丸くなり始めた腹を撫でるが、傍らで読書に勤しんでいるクロードへと問いかける。伏し目がちに微笑む彼女は子を宿して早数節、立派…

ほろほろ、ほろり

※本編後、inパルミラ 「あれ、クロードくんそれどうしたの?」 ちょん、とおのれのまぶたをつつきながら口を開いたのはヒルダだった。 化粧に彩られた桃色の瞳には何の異常も見られず、相変わらずの愛くるしい目でもって眼前にある人間を見つめている。…

大海原と波の色

「あなたは、私の知らない世界をたくさん見てきたのね」 何気なく溢したであろうそのひと言が、なぜだか深く突き刺さった。遠く広がる海を見つめる瞳はまるで視界を写したようにゆらゆらと揺れていて、なんとなくあのたゆたう波のように、どこかへ消えてしま…

まどろみと熱

 寝台の軋む音で目を開ける。だるい首を少しだけ横に傾けると、そこにあったのは縁に腰掛けてひと息つくクロードの背中だった。薄ったい背中には実地訓練や課題で負った傷がいくつもあって、改めて見てみるとこれは確かに未来の同盟を背負うもの、次期盟主の…

心根の記憶

※転生パロ--- 目が覚めたとき、眼前に広がっていたのは見たこともない部屋だった。 床も天井もまっしろなこの部屋に、クロードとの二人はぼんやりと立っている。他にあるのは中央部に鎮座するちゃちな造りの机と、見るからに怪しげな十本の小瓶――そし…