あなたとならばどこまでも
人工島パシオでの生活にも慣れてきた今日この頃、グラジオさまはようやっと安らいだ様子を見せてくださるようになった。 このパシオでのみ普及している独自のバトルスタイルに、数多の地方からやってきた強者との息もつかせぬバトルの日々。刺激的な毎日は…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/ポケマス)
いいだろうか
※数年後if---「キスをしても、いいだろうか」 ことん、と。 まるで物を落とすかのような、不意にかつ唐突に言葉が吐かれた。言葉の主はグラジオで、呟くようなそれは確かに目の前にいる女性――へと向けられている。 グラジオの顔色は変わらなかった…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
たとえこの手が折れようと
恭しく頭を下げる姿はどこか機械的でもあった。どことなく虚ろで人形のような、人らしい感情や営みの感じられない「器」のようなその姿。 よろしくお願いいたします、極力失礼はないよう努めますので。抑揚を限界まで削ぎ落としたような語り口であるが、少…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
アイ
今日のグラジオさまはなんとなく挙動不審だ。 わたしの顔をちらちらと見たり、そばに寄っては口を開きかけ、そして閉じたり、後ろ手に何かを持っているような素振りを見せたり、とにかくいつもと違うお姿を見せてくださる。 わたしとしてはただ「かわいら…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
おはよう、だいすき
「グラジオさま、グラジオさま。起きてください、もう朝ですよ」 エーテルパラダイス奥のお屋敷、グラジオさまの自室にて。まっしろなベッドにかかるまっくろなお布団に手を添えながら、わたしはグラジオさまに呼びかけている。 時刻は午前7時12分、オニ…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
お気づきですか、デートです
くい、と背後から手を引かれて立ち止まる。考えるより先に振り向けばそこにいたのは案の定グラジオさまで、どこか居づらそうに視線をさ迷わせながら口を開いては閉じていた。どうしましたか、そう訊ねるとやはり口をもごもごと動かして小さな声でお返事をく…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
いつかの話
「アローラには、カントーやジョウトの文化がうまく溶け込んでいますよね」 わたしは今、財団の職務を全うするため、グラジオさまについてマリエシティへ出向いている。 少し時間があいたので2人でぶらりと街をぶらついてみたのだけれど、お店の軒先に並ぶ…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
わたしだけ
背中で語る男というのはえてして魅力的に見えるものだけれど、グラジオさまはあの幼くも小さな肩にどれだけの重圧を背負ってらっしゃるのだろう。 療養中のルザミーネさまに代わり、「代理」という形ではあれど決して少人数ではないエーテル財団の代表とい…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
狡い女
エーテルパラダイス2階、ポケモン保護区の片隅にて。各地をまわる財団員により保護されて療養中のポケモンたちの活動音が響くなか、グラジオさまは傷ついたポケモンを慈しむように見つめている。その痛わしげな目つきはどこかルザミーネさまを彷彿とさせる…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
こんなわたしの想いなど
「ぼっちゃまとシルヴァディ、本当に仲良くなられましたね」 かつては噛みつかれ引っかかれ、時に取っ組み合いのケンカすらしていた2人。血みどろになってもシルヴァディ――タイプ:ヌルのことを見放すことなく歩み寄ろうとしていたぼっちゃまの愛がようや…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
わたしの秘密とひとりごと
かしゅ、かしゅ、かしゅ。お屋敷の広々としたお庭にホウキを走らせながら、わたしはぼんやりと物思いに耽っていた。 仕事の合間に小さくため息をついたおり、ふと何かの影がかかってわたしの視界が暗くなる。顔をあければそこにいたのは馴染みのバタフリー…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/アニメ)
苦手なのです
「わたし、マンタインサーフって苦手なんですよね」 唐突にそうつぶやいたに、グラジオは目を見開いた。心底驚いたような表情は年相応に幼げで、けれどもその姿には愛おしさよりも疑問のほうが大きい。どうしたのですか、そう尋ねると、ハッとしつつも居直し…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/USUM)