それであったとするならば
「何にも、なくなっちゃったね」 目に見えて落胆する背中に投げかけた言葉は、果たしていつも通りを取り繕えただろうか。激務と苦痛と絶望に喘ぐ体を叱咤して、ここまで来たというに。 備えつけのベッド、ソファ、何も貼られず真っ白なはめ込みの窓。マルコ…
ゴッドイーター 短編(タツミ) 神を喰らわば
私が死んだ日
『おまえまで居なくなったら、俺は――』 そんな、遠い日の一言が頭のなかで木霊する。理由はわからないところであるが、もしかしたらこれは“予感”だったのかもしれない。 これから、とんでもなく恐ろしいことが起こる――そんな、予感だ。「思ったより元…
ゴッドイーター 短編(タツミ) 神を喰らわば
バカな女だ
「俺、やっぱあいつのこと苦手だわ」 世評通りの絶妙な乾燥感と耐え難い味わいを持つ、ここ数年で最高に激マズだと名高い配給品をエントランスにてつまみながら、正面に座るカレルへと話を投げかける。口振りからなんとなく察するに、今シュンが話している相…
ゴッドイーター 短編(その他GE) 神を喰らわば
また、なんだ。
――大車ダイゴによるアラガミテロが収束して、数ヶ月が経とうとしていた。 サカキ博士主導のもと行われるようになった慈善活動も、もちろん第一部隊のみならず、他部隊も積極的に参加している。 防衛班第二、第三部隊も例外ではなく、特にはこの活動に精…
ゴッドイーター 短編(タツミ) 神を喰らわば
花言葉なんて
今日は私にとって、少しだけ特別な日だった。――いや、私だけじゃないかもしれない。タツにとっても、ブレンダンにとっても、カノンちゃんにとっても、他の隊員にとっても、特別な日。 何故なら今日が、最後だから。私たち第二部隊が、「第二部隊」として…
ゴッドイーター 短編(タツミ) 神を喰らわば
伝えられたら?
ぴろん、と無機質な通知音が鳴り響く。差出人に表示されている名前は、恋い焦がれる幼なじみのものだった。『うっす!』から始まる文章はまさしく彼を思わせるもので、今まさに彼と目の前で話しているかのような錯覚に陥ってしまう。恋しい。彼のことが、何…
ゴッドイーター 短編(タツミ) 神を喰らわば
05.指先に触れたもの
「よっす!」 背中をぼふんと叩けば、こちらの存在に気づいてはいなかったらしい彼の、命を背負う強い肩が怒る。思わず後退りするほどの機敏な動きに、ついこちらのほうが怖じてしまったのだが、当人は至っていつもの調子なようだ。「……やっぱ気合いが入る…
ゴッドイーター 届かない五題 神を喰らわば
04.いつも背中を見ていた
まだ、外部居住区に住んでいた頃の話だ。 生まれ育った故郷を離れ、目の前で両親を喰われ、そして姉を失い。遺された弟2人は私が育てねばならないのだと、半ば脅迫めいた使命感に苛まれていた。 まだ10やそこらの子供だった私は、もちろん間違いだって…
ゴッドイーター 届かない五題 神を喰らわば
03.笑わないで、泣きたくなるから
「大丈夫だって、心配すんなよ」 その言葉が空元気だということに気づいたのは、果たしていつのことだったろうか。 防衛班の結成から程なくして、私自身平静を欠いていた自覚はある。私事ながら、無二の家族である弟の反抗期で消耗しきっていたのだ。「育て…
ゴッドイーター 届かない五題 神を喰らわば
02.君にそんな顔させる原因はいつも彼
朝である。地下に作られた居住区において、寝覚めを良くしてくれる日光なんか射し込んでは来ないけれど。枕元に鎮座する時計と、自然と目覚めるこの体が、今が朝だと教えてくれた。 手短に、けれど手抜きではなく、最低限の用意を済ませて部屋を出る。仕事…
ゴッドイーター 届かない五題 神を喰らわば
01.その瞳の先は僕じゃない
ヒバリちゃん! と名を呼ぶ、弾んだ声にはもう慣れた。 いつしか彼の笑顔は自分ではない誰かのものになっていて、そうやって笑う姿をただ見ているだけの哀れな自分。彼の恋愛相談……もとい、「ヒバリちゃん」が如何に魅力的であるかを熱烈に語られる、そ…
ゴッドイーター 届かない五題 神を喰らわば
お前のことが(GE/ハルオミ)
「貴方、今日誕生日だそうじゃない」 ごつん、と体格に不相応な足音を響かせやってきた人影。凛とした声に少々背筋の伸びる心地を感じながら振り向くと、そこにいたのはだった。 いつも姿勢正しく品行も方正で、自他ともに厳しくあるがゆえに彼女はあまり小…
ゴッドイーター 短編(ハルオミ)