つぶらなひとみ
「――よし、っと。ひとまずはこれで大丈夫かな。おとなしくしてれば治るだろうけど、もしも悪くなるようだったらギンガ団の医者に診てもらおうね」「はあい……」 帰宅後、ヨネは慣れた手つきでテキパキと、の足に適切な処置を施してくれた。おかげで先立っ…
ポケモン 今と未来のむすびつき 降る、降る、なにが?
まばゆいひかり
このところ、なんとなくイーブイが懐いてくれたような気がする。いかくされることも睨めつけられることもなくなったし、それどころか、のとなりでうたた寝するくらいにまでなってくれた。夜だって以前用意したお手製の布団で寝てくれるようになったし、ヒノ…
ポケモン 今と未来のむすびつき 降る、降る、なにが?
理想のあなた
「ああ、おはよう。今から雲海峠まで出るんだけど、よかったらあんたもどうだい?」 それは、イーブイと生活し始めてふた月ほどが経った頃の爽やかな朝のことだった。のろのろと起き上がってきたは、ゴンベとともに野良仕事の準備をしていたらしいヨネに、そ…
ポケモン 今と未来のむすびつき 降る、降る、なにが?
芽生えかけの親心
セキから色違いのイーブイを引き取って、早三日が経とうとしていた。この三日間はにとってひどく目まぐるしいものだったが、しかしなんとなく心地がよく、疲れているくせに心はすこぶる充実している。 一日目にはセキにイーブイとの付き合い方を教わり、リ…
ポケモン 今と未来のむすびつき 降る、降る、なにが?
言わば、青天の霹靂
「なあ、。おめえよ、イーブイに興味はねえか?」 ニヤリともニコリとも形容しがたい笑みを浮かべるセキは、ヒノアラシと遊んでいたにそう声をかけてきた。ここは紅蓮の湿地にあるコンゴウ団の集落――の、外れだ。 何年経っても刺さる視線があるおかげで、…
ポケモン 今と未来のむすびつき 降る、降る、なにが?
催花雨
「じゃじゃーん! たくさんご迷惑をおかけしましたが、この、今日から完全復活です!」 それは、まるで演説のような口振りである。は両手をおおきく振りながら、晴れやかにそう言ってみせた。 かつては全身をくるんでいた包帯もいっさいなくなり、健康的な…
ポケモン 胸中に咲く花の名は 降る、降る、なにが?
雨垂れが穿つ
あれから半月ほどが経って、はやっと一人で歩ける程度にまで回復した。 まだそこいらを走りまわることこそ叶わないが、それでもヨネに連れられて辺りを散歩する様子がたびたび見られる。今ではすっかりゴンベとも打ち解けたようで、この間は二人で昼寝をし…
ポケモン 胸中に咲く花の名は 降る、降る、なにが?
春霖の頃に笑ってみせて
※軽度の流血表現有 --- きっと、命が散る音というのはああいうのを言うのだろう。めちゃくちゃになったの体はすぐに血まみれになって、土砂降りの雨に流される真紅はおぞましいまでの量であった。 機転をきかせたヨネが後方からどろだんごを投げてく…
ポケモン 胸中に咲く花の名は 降る、降る、なにが?
櫛風沐雨
「――キ、セキッ! こらっ、起きろ!」 けたたましい騒音と呼び声に目を開けると、そこにあったのはひどくのうてんきなゴンベの顔だった。 見慣れた家族の顔はセキに強い安心感を与え、先立っての怒声のことも忘れてこのままもうひと眠りしてやるかという…
ポケモン 胸中に咲く花の名は 降る、降る、なにが?
漫ろ雨ほど鈍く刺さって
※軽度の嘔吐描写あり --- 「う、ぇ……ッ」 汚濁音とともに撒き散らされたそれには、いつまで経っても慣れやしない。気持ち悪くて吐き出すのに、吐き出したそれを見てまた気分が悪くなる。吐けば吐くほど心も体も弱っていって、ゆっくりと侵食されるよ…
ポケモン 胸中に咲く花の名は 降る、降る、なにが?
雪解雨にはなりうるか
――本当に、よくわからない娘だな。 気分転換に集落をぶらついていたおり、とある団員の独り言を聞いた。 その口振りは誰をさしているのか明白なものだが、戸惑うような物言いと表情は、よくよく聞けば敵意を感じるほどのものではない。「笑っている」と…
ポケモン 胸中に咲く花の名は 降る、降る、なにが?
空が、見えない
がコンゴウの集落にやってきてから、もうどれだけの日が過ぎたか。数えるのも億劫なくらい、時の流れはあっという間だ。 彼女は、今日も元気に笑っている。誰にどんな仕打ちを受けても、どんな雑言を投げつけられようとも、ずっと笑顔を崩さない。 日を追…
ポケモン 胸中に咲く花の名は 降る、降る、なにが?