あまい光
まんまるの頬を指でつつく。深く寝入っているせいか無防備なそれは普段よりも柔らかくて、思わず夢中になってしまった。 何度つついてもこねくりまわしてもいっさい目を覚ます気配のない子猫は、タルタリヤの腕の中で安らかな寝息を立てている。あまい色を…
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親心
オンドルファはため息をつく。砂漠の砂の匂いを嗅ぎながら、誰に向けるでもない独り言をつぶやき、机の上に積まれた本を眺めた。 普段から研究や読書を好んでいるおかげか、彼がどれだけ神妙な顔をしていても、周りが変に心配したり、茶化したりするような…
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幼なじみの距離感
「あれ……ちゃん、タツミさんのお祝いに行かないの?」 通路の隅でしゃがみこんでため息をついていたおり、聞き慣れた声が頭上から降りかかる。同じオペレーターの制服に身を包んでいる幼なじみは、怪訝そうに首を傾げながらの隣に腰を下ろした。 誰が歩い…
SS SS(テルオミ) 文章
あなたを思い出しただけ
今日のガルグ=マクは暑かった。翠雨の説も半ばに差し掛かった頃、突然の猛暑日の到来に修道院はてんやわんやである。 生徒の大半は制服を夏服に着替え、教師たちも普段より薄着で歩いている。外套を脱いだがゆえにハンネマンから風紀が乱れると叱りつけら…
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花嫁の喜び
「ねえ、ダグ! うちの庭でオレンジを育てましょう!」 オレンジの苗木が入った袋を片手にやってきたを、ダグは怪訝な顔で迎えた。彼女が突拍子もないのはいつものことだが、その手に携えられているものが少々珍しかったからだ。 まごころ雑貨店では季節に…
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愛おしき写真
磨き抜かれた机の上には、馴染みのない景色を映した写真が所狭しと並べられている。モンドでは到底見ることのできないそれらはの興味を引き、まるで宝物のようにきらきらと煌めいて見せた。「……で、これがのびのびリゾートの北西にある、ティティ島での写…
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痛む右足、揺れる背中
ああ、どうして自分はいつもこうなのだろう。吹きすさぶ冬の風のなか、の脳内は自己嫌悪で満ち満ちていく。「うーん……これは、無理に動かさないほうがよさそうですね」 フブキの静かな声は山の静寂に凛と響く。普段なら心地よいはずのそれが、今は少しだ…
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砂場※現パロ
※メインストネタバレ --- 「君ってほんとにゲーム下手くそだよね」 隣でコントローラを握っているハウンドが、心底呆れたように言う。横目に見る彼の両指はせわしなく動き続けていて、のんびりと働いているのそれと並べると、まるで違うゲームを遊んで…
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答えはお仕事のあと!
「私、ボディガードなんていらないと思ってたわ」 ヴェリテくんのフィルムを交換しながら独りごちるシャルロットを、は見守っていた。彼女がこちらに話しかけているのだと気づいたのは、まるみを帯びた頬がふくりと膨れた頃だった。 の眉間にシワが寄る。ど…
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しびしび正座
ロズレイドは辟易していた。今すぐにでも二人の頭の上から「しびれごな」をふっかけてやろうかと思うほどに、長らく続く痴話喧嘩を横目に見ながら、数え切れないほどのため息をついている。「まったくもう、くんのわからず屋!」「ナタネさんこそ、どうして…
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眠れない夜はいつも雨
その日、マウロは宝探しに励んでいた。否、宝探しと言っても「ヴィアトレーアの心臓」にまつわる冒険ではなく、風と直感の赴くまま飛空艇を乗りまわし、春の里から夏の里に向かう道中の、とある浮き島に足を運んでいただけだ。 此度のターゲットは七変化島…
ルーンファクトリー 文章 短編(マウロ)
本日の主役たる私
本日・八月二十三日はの誕生日だ。 翹英荘の子どもたちは皆、毎年のように大人たちから誕生日を祝ってもらう。もちろんそれはも例外ではなく、他に誕生日が被っている人もいないので、今日の彼女は翹英荘の主役だった。 一歩外に出るたび、プレゼントを渡…
原神 文章 獅子と羊の筒井筒 短編(嘉明)