ファイアーエムブレム

いつもそうして

 わたしのなかで再び頭をもたげはじめた、セリス様への恋心。 ひとたび目をさましたそれはみるみるうちに膨らんでいって、一度抑圧されたせいなのか、ともすると以前よりも大きく主張しているような気さえする。その怪物はいつもわたしの耳の隣に心臓を持っ…

天色の波

 ゆら、ゆら、ゆら。わたしは、まったくおぼつかない足取りで夜の城内を歩いていた。 眠れなかった、わけではない。単純に目が覚めてしまったのだ。近頃はどうにも睡眠が浅くて、ちょっとしたことでついつい目を覚ましてしまう。 そのまま寝返りばかり続け…

ふわり、光る

「ねえ、アゼルは“恋”って何だと思う?」 行軍の合間、出し抜けにが問うてくる。さっきまで上空にいた天馬は知らぬ間にすぐ傍へと降下していて、アゼルは馬の手綱を引きながら、彼女の言葉に耳を傾けた。「恋、って……どうしたんだい、いきなりそんなこと…

時に微笑ましくもあり

「交差」のあとくらい--- なんとなく、胸騒ぎがした。 否、それはともすると変化の予兆であったのかもしれない。うまく言語化することはできないが、それでも今からおのれの身に何かしらの刺激が訪れるであろうことを、レックスは静かに察知していた。そ…

そうしてぼくらは蓋をした

 もちろん、そのときのアゼルにシグルドたちの話を盗み聞きするつもりなんてなかった。たまたま部屋の前を通りかかった際、つい、耳に入ってしまったのである。 彼らが言っていたのは、アルヴィスが当主になってすぐのヴェルトマー家についてだった。父が―…

きみを守るよ

 マーニャが戦死した。 シレジアが天馬騎士団マーニャ隊は、同じく天馬騎士団に所属していたディートバ隊や、ユングヴィ公子アンドレイ率いるバイゲリッターに立ち向かい――そして、あえなく散ってしまった。 さしもの天馬騎士たちも天敵である弓兵相手に…