わたしだけ
背中で語る男というのはえてして魅力的に見えるものだけれど、グラジオさまはあの幼くも小さな肩にどれだけの重圧を背負ってらっしゃるのだろう。 療養中のルザミーネさまに代わり、「代理」という形ではあれど決して少人数ではないエーテル財団の代表とい…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
狡い女
エーテルパラダイス2階、ポケモン保護区の片隅にて。各地をまわる財団員により保護されて療養中のポケモンたちの活動音が響くなか、グラジオさまは傷ついたポケモンを慈しむように見つめている。その痛わしげな目つきはどこかルザミーネさまを彷彿とさせる…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
こんなわたしの想いなど
「ぼっちゃまとシルヴァディ、本当に仲良くなられましたね」 かつては噛みつかれ引っかかれ、時に取っ組み合いのケンカすらしていた2人。血みどろになってもシルヴァディ――タイプ:ヌルのことを見放すことなく歩み寄ろうとしていたぼっちゃまの愛がようや…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/SM)
わたしの秘密とひとりごと
かしゅ、かしゅ、かしゅ。お屋敷の広々としたお庭にホウキを走らせながら、わたしはぼんやりと物思いに耽っていた。 仕事の合間に小さくため息をついたおり、ふと何かの影がかかってわたしの視界が暗くなる。顔をあければそこにいたのは馴染みのバタフリー…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/アニメ)
苦手なのです
「わたし、マンタインサーフって苦手なんですよね」 唐突にそうつぶやいたに、グラジオは目を見開いた。心底驚いたような表情は年相応に幼げで、けれどもその姿には愛おしさよりも疑問のほうが大きい。どうしたのですか、そう尋ねると、ハッとしつつも居直し…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(グラジオ/USUM)
どうか背中を向けないで
「むむむ……」 背中に突き刺さる視線を感じるのは、どうやら気のせいではないらしい。それなりに人通りのある自然公園の片隅で、は極力顔に出さないようにしながら、しかし、みだりに振り払うこともできないままでいる。 じっとりと刺さるそれは嫌な感じこ…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(リーリエ/ポケマス)
おしゃれ/気取り屋/行動的
「さん、さんっ! お誕生日おめでとうございます!」 それは、ちょうど休憩に入ってエーテルパラダイス内を歩いていた、昼下がりのことだった。 綻ぶような笑顔とともにやってきたリーリエは、にとってだいはくはつにも等しい言葉を優しく投げてくる。にこ…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(リーリエ/USUM)
たそがれティータイム
「お嬢さま、少し休憩なさってはいかがですか?」 ポットに並々そそいだロズレイティーをトレーに乗せ、は机に向かい熱中しているリーリエのそばへ歩み寄った。 が話しかけるその瞬間までひたすら眉間にしわを寄せていたリーリエだが、彼の声とロズレイティ…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(リーリエ/USUM)
わたくし、絶対挫けません!
――ここの模様が、お花みたいで可愛いから―― あの言葉に嘘はなかった。実際リーリエは植物のたぐいが大好きだったし、ラナキラマウンテンよろしく雪のようにまっしろなタマゴに、言いようのない魅力を感じていたのは紛うことなき事実である。 ただ、惹…
きみは太陽、ぼくは月 ポケモン 短編(リーリエ/アニメ)
04
次に目を覚ましたとき、の視界にあったのは変わらない真っ白な天井であった。 一切の汚れも見えない白。心が滅入りきったときにはまるで自分を拒絶するようなふうに見えていたこの天井も、今は少しだけ優しい色に思える気がした。この身を包み込んでいるシ…
きみは太陽、ぼくは月 てのひらに ポケモン
03
あたたかい感触がする。額を優しく撫でる手のひらはの傷ついた心身をゆっくりと癒やすようで、その柔らかくも厚いぬくもりに、夢現の狭間で胸の奥をじんわりと揺らした。 この手の主は誰だ――? ビッケのそれとはまた違う柔らかさをした肌は、ほんの一瞬…
きみは太陽、ぼくは月 てのひらに ポケモン
02
結局グラジオの見送りにも顔を出せないまま、は切迫とした日々を過ごしていた。旅立ちから早数ヶ月、彼が居なくても世界は変わらず進んでいき、きっとどこかでは息もつかせぬような日々が流れているのだろうと思う。 かつてのような空っぽの毎日。グラジオ…
きみは太陽、ぼくは月 てのひらに ポケモン