もえる草芽の色をした、
シグルド軍がシレジアに落ち延びてから、気づけば半年の月日が経とうとしていた。 寒冷な気候はシレジア以南で生まれ育った諸君に厳しく当たることもあったが、その無慈悲な冷たさもラーナ王妃の温かさによっていっさいが融解する。 苦難ばかりでままなら…
Interlude ファイアーエムブレム 迫る灯火
四人目の家族
※子供がいる---「産後の肥立ちが悪い」なんて言葉は、今までの人生でも何十回と聞いてきタ。それは、たとえばゼークス帝国にいた頃のくだらない喧騒だったり、雑貨屋の店番をしていたときの、なんてことない世間話だったリ。 当時のオレは「ご愁傷さマ」…
ルーンファクトリー 短編(ダグ) 胸中にてすくう人
君の面影にキスをした
※5軸--- が息を引き取ったのは、そう昔のことでもない。 頑張った、のだと思う。元来あまり強くなかった体は晩年になるとやはり端々で悲鳴をあげて、あの脆く華奢な体に数多の苦痛を連れてきた。かつて彼女の祖母がそうであったように、少しずつベッド…
ルーンファクトリー 短編(ダグ) 胸中にてすくう人
仲良きことは美しきかな
「あ、ねえ! フレイさん、ダグさんの話知ってる?」 自室から出てきて、直後。ドアをくぐった目の前をちょうど通りかかったらしいキールが、明るく話しかけてくる。 相変わらずの愛らしい笑みは見る人の毒気をすっかり抜いてしまうようで、さしものフレイ…
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初恋、初キス、初嫉妬
「妬いてなんかないわ」 そう出し抜けにつぶやくはぷくりと頬を膨らませている。まごころ雑貨店の店先にて、彼女はここぞとばかりにダグへと視線を突き刺していた。 どことなく呆気にとられたダグに思い切り詰め寄ってみるが、しかし彼は依然として身に覚え…
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あなたのほうよ
「だから無理すんなって言っただロ!」 見慣れた木造の天井を眺めるあたしに向かって、ダグはため息まじりに呆れたような声を出す。 ふかふかのベッドは温かいし、ダグは隣にいてくれるうえ、言葉は少し乱暴でもあたしを気遣ってくれているという、個人的に…
ルーンファクトリー 短編(ダグ) 胸中にてすくう人
覚えているものだから
「ねえ、ダグ。フレイが最近おもしろい木を育ててるって話、知ってる?」 それは火曜日の昼下がり。退屈な店番でふあふあとあくびを繰り返すダグの目を覚ましてやろうと、は商品を整理する手を止めることなく、先日ヴォルカノンに聞いた話を彼に向けて振った…
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黄金の欠片
黄金に「誰か」の面影を見た。 その「誰か」が誰なのか、擦り切れた記憶のページをめくってなんとか手繰ってみようとする。おそらく従軍時代の記憶だ。頭の片隅にいるのはもはや顔も朧気になってしまった男であるが、ただ無機質な日々を送るなか、「故郷に…
ルーンファクトリー 短編(ダグ) 胸中にてすくう人
恋の予感?
ダグ、と呼ばれてふと我に返る。 手元にあった報告書をぱたりと閉じ、声のほうを振り向けばそこにいたのは家主であるブロッサムだった。 相も変わらず穏やかな笑みをたたえるそのすがたに、ちくりと罪悪感が刺激されてほんの一瞬だけ顔をしかめる。 ――…
ルーンファクトリー 短編(ダグ) 胸中にてすくう人
05
「…………」「…………」「……なんかやけにしおらしいなと思ったらやっぱり体調崩してんじゃねーカ!」「え……えへへ……」「寝る前にあんなこと言われたほうの身にもなってみロ! そのうえいつになっても全ッ然起きてこねーんだからヨ!」「面目ないわ……
ルーンファクトリー 病床のおり 胸中にてすくう人
04
「――ねえダグ、まだ起きてる?」「ん……どうしタ? こんな夜遅ク」「えっと……」「?」「ちょっとね、顔が見たくなっちゃったの」「えっ……お、おまエ――」「あと話もしたくて。いい?」「お、おう……話してみろヨ」「…………」「…………」「…………
ルーンファクトリー 病床のおり 胸中にてすくう人
03
「……ねえ、ダグ。怒ってる?」「………………」「あ……あの、ごめんなさい。あなたの忠告を聞かずにまた無茶なことして」「……なんでイドラの洞窟なんて行ったんダ」「それは……」「ひとりで行くなんて無茶に決まってんだロ! なんとか運良く見つけられ…
ルーンファクトリー 病床のおり 胸中にてすくう人