03

「……ねえ、ダグ。怒ってる?」
「………………」
「あ……あの、ごめんなさい。あなたの忠告を聞かずにまた無茶なことして」
「……なんでイドラの洞窟なんて行ったんダ」
「それは……」
「ひとりで行くなんて無茶に決まってんだロ! なんとか運良く見つけられたからよかったものの……あのまま誰にも見つけてもらえなかったらどうなってたかわかってんのカ!?」
「う……」
「無駄な心配かけるなヨ。……で、なんのためにあんなところまデ?」
「え……エビ」
「ハ?」
「イドラの洞窟ってね、地下に小さな泉があって……そこ、エビが釣りやすいんですって。竜の湖ではうまく釣れなかったし、魚屋さんにも売ってなくて……フレイに相談したらイドラの洞窟がいいかもって教えてもらえたから」
「……なんでエビなんカ」
「天どんを作りたかったの。ダグの快気祝いじゃないけど、とにかく元気を出してほしくて」
「………………」
「あ……う、ごめんなさい。もう二度としないから――」
「……けロ」
「え?」
「次に行くときは、今度こそオレに声かけロ。一緒に行ってやるかラ」
「ダグ……?」
「あーくそ、ほラ! もう寝ろ寝ロ! ちゃんと怪我治してうまい天どん作ってくれヨ!」
「あ……」
「あと、さっきの答エ。別にオレは半分しか怒ってないから安心しロ」
「半分って……残りは?」
「安心してル。お前がイドラの洞窟で倒れてるの見つけたとき、冗談抜きで血の気が引いたんダ。だから、今こうしてちゃんと話ができてよかったなって思ってんだヨ」
「……あたしのこと、心配してくれてたの?」
「当たり前だロ。家族なんだから心配すんのは当たり前じゃねえカ」
「家族……」
「なんだよ、お前が言ったんじゃン。……ほら、寝つくまでここにいてやっから、さっさと目閉じろヨ」
「……うん。ありがとう、ダグ。……おやすみなさい」
「おウ。おやすみ、また明日ナ」

 
20210408