僕らが育むこれからの
「――よし。これで大丈夫だと思うよ。多分、あっちの土は水分も多いし、ちょっとお水をやりすぎちゃったのかもしれないね。この花はもっと乾燥しているほうがいいから」「なるほど……やっぱり、それぞれに適した環境があるのね」「そうだね。でも、一気に全…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(???) 細氷に光る懐刀
軌跡を辿る
言っておきたいことがあった。最後の最後になるけれど、胸に燻っているこの気持ちだけはちゃんと伝えておきたかった。 やらずできずの後悔は、もういっさいやめにしたかったのだ。 たとえ押しつけがましい結果になったとしても、ある種のケジメとして、私…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(戦争編) 細氷に光る懐刀
あどけなく、無邪気な
――今度こそたくさん一緒にいたい。あの頃より自由になった僕で、君のとなりにいさせてほしいんだ。 まるで、魔道の爆発を目の当たりにしたときのように。アッシュのその言葉が耳の奥にこびりついて、いっさい離れないでいる。 嬉しかった、のだと思う。…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(戦争編) 細氷に光る懐刀
二人で夜に沈みたい
鼓膜に滑り込んでくるのは、そよ風で木の葉が擦れる音と和やかな梟の歌声くらい。ひどく静かで穏やかな夜が、あたりをすっかり染めている。「……なんだか、今日はいつもと逆だね。普段は僕が君を呼び止めることが多かったから」「そうね……確かに私、ずっ…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(戦争編) 細氷に光る懐刀
必ず誰かが手をとって
――まえ、もか。お前も、否、お前こそ! 嗚呼、そうして、再び俺の前に現れるのか……ッ! 耳の奥に木霊する怒声と呼応するかのごとく、右手がびりびりと痺れ、震える。数時間前、軽くではあるが彼に――かの剛力を持つディミトリに、すげなく払われたせ…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(戦争編) 細氷に光る懐刀
稲妻、落ちる
「おはよう、。あれから調子はどうかな?」 朝。突然呼び止められたのは、学生寮の階段を降り、花壇に目を向けながらぼうっと歩いていたときだった。 風にそよぐ花々は、私の心をひたすらに癒やしてくれる。それと同じように彼の――アッシュの声すらもまた…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(士官学校編) 細氷に光る懐刀
頭の奥に在る景色
あれから七年の月日が経ち、私の人生には様々な変化が訪れた。恨めしい存在であった母が亡くなり、彼女の既知である紋章学者の養子に入ったのは三年ほど前のことだ。 今に至るまでには様々な悶着があったが、目的を果たすためならそんな苦労は瑣末なことだ…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(士官学校編) 細氷に光る懐刀
何かが崩れる音がした
あの日以来、アッシュには一度も会っていない。理由はちっともわからないが――否、もしかするとわからないふりをしているだけかもしれない――あれからいっさいの音沙汰がなくなってしまったのだ。 とはいえ、それもただ「アッシュが我が家に来なくなった…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(過去編) 細氷に光る懐刀
ちくちく、ぴりぴり
アッシュの家は、同じ町のはずなのにずいぶん離れた場所にあった。私が想像していたよりも遠いところに彼のお城は建っていて、毎度ここから来てくれているのかと思うと、少しばかり罪悪感が湧いてくる。 しかし、一家で住んでいたにはずいぶんちゃちな造り…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(過去編) 細氷に光る懐刀
まばゆい記憶
アッシュはきっと、本来ならば薄くかがやく瞳を持っている人なのだろうと思う。置かれている境遇のせいで暗く濁っているだけで、元来はもっと眩しく、清らかな人間であるのだろうと。 私は、一度でいいからまばゆいアッシュのすがたを見てみたいと思ってい…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(過去編) 細氷に光る懐刀
君と広がる世界の果てへ
「それじゃ、。お母さんは出かけてくるけれど、くれぐれも外には出ないようにしてちょうだいね」 母は私が何か言うよりも先に出て行った。 いつもそうだ。あの人は結局私の意見など露も求めておらず、ただ自分の都合を押しつけるばかりの女である。玄関先で…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(過去編) 細氷に光る懐刀
ふれあいの袖
気配を消すのは得意だった。 存在を悟られぬよう、息を殺して日々を過ごした。自分なんかいないものだと、誰にも自分を知られぬように、母の手を煩わせぬように。自分が大人しくしていると、母はなんとなく機嫌が良かった。 別に彼女に何か感情を抱いてい…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(過去編) 細氷に光る懐刀