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「   」(クロード)

 目を開くと、そこには無機質な天井が視界いっぱいに広がっている。 見慣れたはずのそれが私の心に安堵や康寧を与えてくれることはなく、むしろ全身の気だるさと共に、このうえない嫌悪感や不快感をもたらしてくれた。 ――私はこの家が嫌いだ。気が休まる…

それってほんとは何角形?(ガジ)

「はあ……エリザさん、今日も可愛いナ……」 うっとりと、のぼせたように呟くガジさんは、ほんの数分前に去っていった彼女の背中の幻を、いまだに追いかけつづけている。 その夢中な様子を見れば、彼が本当に彼女を――エリザさんを強く思い慕っていること…

彼と、カレーと(ガジ)

※公式で片想いフラグのあるキャラとの恋愛描写--- 今日は、グリシナのカレーうどんが食べたいナ―― ひどく穏やかな声でそう言いながら、ガジさんはゆっくりとベッドに沈み、か細い寝息を立てはじめた。 ……自分が風邪を引いて倒れているということを…

とどのつまりは……(クロード)

「なあ、ウィノナ。これから、俺と一緒に授業を抜けないか?」「はあ……? どうして私がそんなことしなくちゃいけないのよ」「まあまあ、そう言うなって。たまにはいいだろ? 俺も一人で抜けるのはなんとなく気が引けてね。寂しいと言ってもいい」「なら普…

よい夢を(セキ)

 ふす、ふす。呼吸にともなって上下する頬が、プリンのようにふかふかしているように思えて仕方ない。 体はひどく細っこいのに、頬だけはこんなにもふっくらしているのだから不思議なものだ。これが子供というものなのかと、隣で寝入るヨヒラを見ながら、セ…

それが最後の笑顔だった(ローレンツ)

「なんか……呆気ない卒業式だったね」「今日までに事件がありすぎたからな。帝国の宣戦布告に先生の失踪――一年を通して波瀾だらけだったが、よもや最後の最後にかような爆弾が飛んでくるとは」「本当だよね~。――あーあ、とうとう家に帰るときが来ちゃっ…

君をおもえば(絵名)GL

「……絵名。これ、あげる」 出し抜けに差し出された花束には、溢れかえるほどの花が微笑っている。こぶりなそれは澄んだ青紫が印象的で、見ているだけで心が洗われるようだ。「えっ……なに、どうしたの? 花束なんて」「通りがかった花屋で一目惚れしたの…

これぞあなたによく似合う(クロード)

「金合歓?」 ウィノナの細腕に抱えられる、目いっぱいの花束。パルミラではめったに見ないふわふわの花は眩しいくらいの黄色をしていて、明るい色の葉っぱも手伝い、目の前の男を想起するに充分すぎるものだった。 ほんのりとした優しい香りも相まって、ウ…

知っているんだ(グリーン)

 あの人はひどく気取っていて、格好つけで、プライドが高くて――ほんの少しだけ、とっつきにくいところがある。わたしもトレーナーとして出会ったばかりの頃、ミリほどの苦手意識があったくらいだ。 グレンじまでナーバスになっているあの人を初めて見たと…

なつかしいね(マリィ)

「……あ。マリィ、あれ、覚えてるかい?」 ラベンダーが指差す先にあったのは、スパイクタウン郊外にある小さな公園。少しばかり寂れているし、遊具の痛み具合からは治安の悪さが見て取れるが、それでも二人にとっては思い出深い場所だった。「ここ……そう…

反省してる?(クロード)

「だから言ったでしょう、根を詰めすぎるなって。日頃から口を酸っぱくしていた理由、これで理解してもらえたかしら?」「すまん……」 ぐうの音も出ない、とはまさにこれ。寝台に沈み込んで渋い顔をするクロードは、頭上から降ってくるウィノナのお説教に少…

目の前にいる君だって(ルキナ)近親愛

「エヴァン! あなた、もう少し慎重に動くということはできないのですか……!?」「あのなあ、そんなちまちまやってたら大物を取り逃がしちまうだろうが」「ですが、無闇に突っ込んでいっては命を落としかねませんよ! 頼みますから、もう少し……」「いく…