それが最後の笑顔だった(ローレンツ)

「なんか……呆気ない卒業式だったね」
「今日までに事件がありすぎたからな。帝国の宣戦布告に先生の失踪――一年を通して波瀾だらけだったが、よもや最後の最後にかような爆弾が飛んでくるとは」
「本当だよね~。――あーあ、とうとう家に帰るときが来ちゃったなあ」
「なんだ、ステファニー。君は家に帰りたくはないのか? リシャール家にはあの素晴らしい姉君がいらっしゃるのだ。彼女の薫陶を賜り、今まで以上に淑女として精進したまえ」
「――うん、そうだね」
「なに、士官学校を卒業しても僕たちの縁が切れるわけではないからな。グロスタール家とリシャール家にはかねてよりの交流もあるし、千年祭の日に再びまみえようという約束もしたのだ。少なくとも五年後には会えるさ」
「……ねえ、ローレンツ」
「なんだね?」
「ん……ううん、何でもないよ。じゃあまたね」
「ああ。次に会うときは、貴族としてこれまで以上に成長した僕をお見せしよう。このローレンツ=ヘルマン=グロスタールをね……!」

 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『またね』です
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