よい夢を(セキ)

 ふす、ふす。呼吸にともなって上下する頬が、プリンのようにふかふかしているように思えて仕方ない。
 体はひどく細っこいのに、頬だけはこんなにもふっくらしているのだから不思議なものだ。これが子供というものなのかと、隣で寝入るヨヒラを見ながら、セキはすっかり考え込んでいた。
 ――きっと、良い夢を見ているのだろう。安らいだような表情も、ほんのり桜色に染まった頬も、彼女の熟睡のほどをあらわしている。ほとんど眠れずに心身を悪くしていた頃に比べたら、本当に健やかになったものだ。
「このまま、何事もなく元気でいてくれたらいいんだがなあ」
 ふくふくの頬を数度つついても、ヨヒラはいっさい起きる気配を見せない。心を許しきってくれていることがじんわりと胸にしみた。
 感慨深さに身を任せつつ、セキはゆったりと姿勢を直して、寝入ったままの、ほんのりあたたかい体を抱きしめる。朝起きて一番に見る彼女が、やわらかに笑ってくれていることを願いながら。

 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『夢の中』です
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