君をおもえば(絵名)GL

「……絵名。これ、あげる」
 出し抜けに差し出された花束には、溢れかえるほどの花が微笑っている。こぶりなそれは澄んだ青紫が印象的で、見ているだけで心が洗われるようだ。
「えっ……なに、どうしたの? 花束なんて」
「通りがかった花屋で一目惚れしたの。見てたら絵名にプレゼントしたくなって……」
「もう、すぐそういうこと言うんだから。でもありがとね、こんなにおっきい花束なんて、一生のうちに何回もらえるかわかんないもん」
「絵名がほしいなら毎月でも――」
「こーら、そういう話じゃないでしょ」
 有明ならば本当にやりかねない。だからこそ、はっきり言っておく必要があった。
 溢れそうなネモフィラの花は、有明の想いの強さをそのまま表しているようだった。真っ赤な薔薇を数輪刺して、ネモフィラを食わない範囲で印象を調整しているあたり、もしかするとネモフィラ以外の花々もすべて有明がチョイスしたものなのかもしれない。
 なんとなく、見覚えがあったのだ。色の使い方やバランス感覚には有明の感性が見て取れて、それを察せられる自分が少しだけ誇らしく思えた。

 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『君に花束を』です
https://shindanmaker.com/613463