「   」(クロード)

 目を開くと、そこには無機質な天井が視界いっぱいに広がっている。
 見慣れたはずのそれが私の心に安堵や康寧を与えてくれることはなく、むしろ全身の気だるさと共に、このうえない嫌悪感や不快感をもたらしてくれた。
 ――私はこの家が嫌いだ。気が休まる時間なんて一時もないし、苦痛ばかりが蔓延っている。どこにいても、何をしていてもずっと誰かに見られているようで、たとえ自室にこもっていても安らぐ暇などありはない。
 それくらい、この家に潜む人の気配はひどく大きく、苛烈で、私にいっさいの牙を向けてきているふうなのだ。
 いくら辛苦に耐えようとも目に見えた結果や心躍る成果があるわけでもないのだから、その程度はひときわである。そして何より、寝ても覚めても、待てど暮らせど“彼”から何かが来ることはなく――依然として私はたった一人、暗闇のような毎日を過ごすだけ。
 これが自分の選んだ道だとわかってはいれども、まるで彼らと共に過ごした日々が、士官学校での毎日こそが夢だったのかと錯覚するほどに、私はただ重たいだけの日常を送るばかりだった。

 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『夢醒めて』です
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