なつかしいね(マリィ)

「……あ。マリィ、あれ、覚えてるかい?」
 ラベンダーが指差す先にあったのは、スパイクタウン郊外にある小さな公園。少しばかり寂れているし、遊具の痛み具合からは治安の悪さが見て取れるが、それでも二人にとっては思い出深い場所だった。
「ここ……そういえば昔、アニキとラベンダーさんに連れてきてもらったっけ」
「そうそう。あのブランコにマリィを乗せて、背中を押してあげたこともあったよ。ぼくが加減を間違えたせいでマリィはすっごく怖がっちゃって、降りたあとネズにひっついて泣いてたっけな――」
「そっ……そういうことは言わんでええの!」
 真っ赤になったマリィはラベンダーの背中をぽかぽかと叩き、全部忘れて! と何度も繰り返す。
 その取り乱した様子は普段とは打って変わった年相応なもので、日頃よりも愛おしく思えたのだった。

 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『公園のブランコ』です
https://shindanmaker.com/613463