花香る町で

変換数の都合上、名前変換の仕様が少々特殊になっております。ご了承ください。
なまえ①→姉
みょうじ→姉のあだ名
なまえ②→弟
なまえ③→弟のあだ名

君に希う、その行く末にて / 更新停止中

  • 果てしない序章

    『あなたのお父さんはね、本当に優しい人だったの』 それが、母の口ぐせだった。 母はずっと私を守ってくれていた。一般的なフワリとは異なる毛色をした私を、トロくさくてすぐに捕まりそうになる私を、いつまで経っても強くなる兆しを見せなかった私を。 …

  • 希う

    『珍しいモンスターを保護したから、デズにも見に来て欲しイ』 そんな誘い文句につられて、オレはガジの家へと出向いていた。 彼はこのドワーフの集落の中でも特に親しい友人で、普段からどこか飄々としている掴みどころのないやつだ。家だってわりと近いほ…

  • 新たなる旅立ち

     昨日までは元気だった。昨日までは健在だった。昨日まではちゃんと、歩いて、笑って、この頭をなでてくれた。 けれどもう、今朝にそんなものはなかった。   ◇◇◇ 「お父さん……」 目の前のお父さんは、もうぴくりとも動かない。……死んではいない…

  • 呼び声

    『     』 誰かに呼ばれている気がしていた。その声は、お母さんが死んでしまってから感じるようになったものだと思う。耳から聞こえる類いのものじゃなくて、もっと内側から、例えるなら頭の中に直接語りかけてくるような。 一歩進めば、その声はひと…

  • 吐露

    「交流祭、ねえ……」 風呂を沸かすための薪割りに精を出しながら、は独りごちていた。 近々このシアレンスと有角人の集落とで交流祭を行うらしい。長い間いがみ合っていた人間と有角人が手を取り合うため、ひいてはシアレンスの花を咲かせるためだと、近ご…

短編 / 姉

ガジ

  • ないしょだよ

     料理をする人にとって、「おいしい」は魔法の言葉。料理を食べる人にとって、「おいしい」は幸せの味。私はそう信じてる。 私は料理を作るのが好きだし、食べることだって大好き。私のご飯を食べてくれること、それを「おいしい」って言ってくれること、そ…

  • 知ってるくせに

    「逃げるなヨ」 後ろからまわされた手は思いの外たくましかった。 カルロスさんと比べたら細く見える彼の腕。女で、しかも年下の私のものと比べちゃいけないこともわかってるけれど。 だけどそうでもしていないと、今の私は頭がパンクしてしまいそうなの。…

  • 意識、した?

    「そういえばガジさん、最近エリザさんを見てもおかしくなりませんね」 おもむろにそう言ったのは親友であるマイスだった。ここはオッドワードの谷。今日は彼に誘われて、ちょっとした散歩に出かけていた。「……そうカ?」「そうですよ! 傍目に見ても心配…

  • 心の奥にひそむ足音

    ※子供がいる ---  二階にいても聞こえてくる、鉄を打つ小気味の良い音。 目覚ましのごとく鳴り響くそれは幼い子どもたちを夢の世界から連れ戻してくれて、ふあふあとあどけないあくびの二重奏に私は思わず微笑んてしまった。 おはよう、今日も元気だ…

  • いつも背中を、いつかその手を

    「オレがシアレンスに来る前の話なんだがな、それはそれは美しい花を見たことがあるんダ」 唐突に、けれどもひどく穏やかに語り出したのはガジだった。愛おしい人のゆったりとした声に、はじっと耳をかたむける。 郷愁にも似た色を滲ませる声はどこか淋しげ…

ラスク

  • たくさんの「幸せ」をあげたくて

    「はい、ラスク! これあげるね」 始まりは、とある昼下がりにあてもなく散歩していたときのことだった。 がラスクへと手渡したのは、こじんまりとしたペールオレンジの包み。魅惑的な甘い香りをまとうそれを、ラスクは期待の色をちっとも隠さないまま開き…

キール

  • モフモフの夢

    「あの二人、本当に仲が良いですね」 じわじわと冬の足音が聞こえ始めた、秋の月24日のこと。 客人であるフレイと談笑に励むかたわら、ふと窓の外に目を向けたフォルテは落とすようにつぶやいた。リラックスティーが並々と注がれているティーカップが、机…

バド

  • タマゴヤキマルメターノ

    「バドさん、バードーさぁん! 起ーきーて!」 セルフィアにたどり着いて幾日。私の朝は、この大きな店主を引きずり起こすことから始まる。「うぅ~ン……あと10分……」「そこは5分って言うとこじゃないの!? ……もー、起きてよぉ~~~!」 ずりず…

短編 / 弟

シャオパイ

  • お願いするようだ!

    「キミは、なかなか手慣れているようだな」 男湯の掃除から帰ってきた直後にかけられた第一声。目線のだいぶ下から聞こえてきたそれに、俺は軽く首を傾げた。「ちょっと見ただけでわかるもん?」「もちろんだが。ワタシがやるより数倍はやいし、隅から隅まで…