意識、した?

「そういえばガジさん、最近エリザさんを見てもおかしくなりませんね」

 おもむろにそう言ったのは親友であるマイスだった。ここはオッドワードの谷。今日は彼に誘われて、ちょっとした散歩に出かけていた。

「……そうカ?」
「そうですよ! 傍目に見ても心配になるレベルでしたもん」
「心配っテ……」

 ガジは困惑する。そういえばそうだ。一時期は我を忘れてしまうほどに惚れ込んだ彼女と、最近はまともに会話ができている気がする。
 ……いつからだろう? いつから、彼女の目を見て話せるようになったのだろう……?

「――グリシナ」
「!? ――ふぶっ、げほ、ごほッ……な、なんだマイスいきなリ」
「あはは、当たりですか」

 爽やかなマイスの笑みから、微かなサディストの気がただよう。いつもと逆なこの状況に、ガジは背中がぞわぞわした。

「頑張り屋ですもんね、グリシナは」
「なんの話かナ……」

 とぼけても無駄ですよ、と言いながらマイスがハンマーを打ち下ろす。ガン、という鈍い音とともにアクアマリンが顔を出した。

「さっきもフワリ倒すのにめちゃくちゃ戸惑ってたじゃないですか」
「……」
「特に泥だらけになって真っ黒だったフワリ」
「…………」
「木の枝見ながらボーッとしちゃって、さてはグリシナにプレゼント――」
「ああもう、マイスもずいぶん意地が悪いナ!」

 半ばやけになりながら、ガジもマイスの隣でハンマーを大きく振りかぶる。いつもなら百発百中、少しの乱れもなく岩石を狙い打つのだが――

「……取り乱しすぎじゃないですか」
「…………」

 揺さぶられたガジの得物は、不自然な弧を描いて彼のつま先へと降りたったのだった。

「マリオンのとこ、行きます?」
「……今は話しかけないでくレ」