桃一色
何気ない、よく晴れた朝のことだった。春の訪れからしばらくした今日、寝起きの視界に飛び込んできたビッグニュース。この吉報を早くに伝えたくて、朝食を食べる時間すら惜しみ、無我夢中で駆け出したのがほんの少し前のことだ。 ほんのり汗ばむくらいのこ…
一片冰心 原神 文章 短編(重雲)
春の風をまといて
――ああ、ちょうどよかった。君に伝えておきたいことがあったんだ。 常人ならば身構えてしまうであろうディルックの言葉を、はいっさいの緊張を孕むことなく受け取った。 理由は大したことではない……もちろん、「ディルックさんはいつもわたしに優しい…
Admire 原神 文章 短編(ディルック2)
「俺たちの目が、いつまでも同じところを見ていられるように。」
フォンテーヌに入ってから、果たしてどれほどの時が経った頃だったろうか。あの性格を考えれば当然だが、早速この国での休暇に退屈しはじめたタルタリヤは、「決闘代理人」という響きにすっかり夢中になってしまっていた。 彼は事あるごとにホテル・ドゥボ…
Adore 原神 文章 波間をたゆたうトラジディ
形影一如
「――やっぱり、皆さん相変わらずでした。なかには、『俺たちが飲めば飲むほど酒はたくさん作られる』なんて言ってる人もいて……」「酔っ払いにありがちな謎理論だな」 アカツキワイナリーの屋敷に足を踏み入れた直後。旅人の視界の先には、赤と緑の見慣れ…
Admire イベント(のんびり旅行記) 原神 文章
現地調査
エンジェルズシェアは情報収集、および人探しにもってこいの場所である。 理由は至極単純だ。モンド人は何よりも酒を愛しているがゆえ、この場にはたくさんの人間が集まる。つまり、シンプルに効率がいいのである。 次に、酒に身を委ねた人間は驚くほど口…
Admire イベント(のんびり旅行記) 原神 文章
約束
――そういえば最近、たちの顔を見てない気がするぞ。あいつ、なんとなくふわふわ〜ってしてるし、ディルックの旦那にいじめられてないといいけど…… それは、旧友の足跡をたどる旅路の只中のことだった。パイモンの提案によってモンド城を訪れた旅人は、…
Admire イベント(のんびり旅行記) 原神 文章
つながりを鎧う
「えっ……マサル、ヨロイじまに行くの?」 シュートシティでの一件から、わたしたちの仲はぐっと親密なものとなった。 世間的に見れば、いわゆる「恋人同士」といって相違ないものと言えるだろう。もちろんマリィにはすでに報告済なのだけれど、知らぬ間に…
Spike Love ポケモン 文章 迷い子のみち
壊れたゆめの先で
「いやあ、にしてもいっぱい遊んだねえ」 シュートシティの絶景を眺めながら、感嘆と休息のため息を吐く。わたしの向かいに座るマサルは静かにうなずいて、わたしの視線を追うかのように、広い敷地へと目を向けた。 初めてのシュートランドはいくら歩いても…
Spike Love ポケモン 文章 迷い子のみち
言うまでもないね
『……そうですね。もしかしたら、リヴィア署長の言うとおりかもしれません』 アレスさんのあのひと言が、耳の奥から消えてくれないのはなぜだろう。「一期一会」の一室、「サクラ草の間」で寝転ぶ傍ら、わたしは見慣れない天井を眺めながら十七回目のため息…
ルーンファクトリー 文章 短編(アレス)
「実りある恋」
『ああ、いいんじゃないカ? 外に出るのは悪いことばかりじゃないし、そのほうがの世界も広がるだロ』 ――わたし、この町の外を見てみたい! 唐突に言い放ったわたしに向けて、おじいちゃんはのんびりした笑みを湛えながらそう言ってくれた。 おじいち…
ルーンファクトリー 文章 短編(アレス)
崩れ落ちるまで、あと少し
背中に妙な違和感がある。 否、違和感といっても嫌悪するようなものじゃない。なんとなく淋しいというか、物足りないというか、まるで何か忘れ物でもしているかのような、不思議な感覚があるだけだ。 この違和感がいつ現れたのか? そんなの、もはや考え…
Spike Love ポケモン 文章 迷い子のみち
あなたの胸を押し開く
スマホロトムに指を滑らせて、そそくさとメッセージを打ち込む。『もうついてるよ』既読はつかない。時計を確認してみると、待ち合わせ時間を五分ほど過ぎている。 もしや、何かトラブルにでも巻き込まれているのだろうか? そらとぶタクシーで迎えに行く…
Spike Love ポケモン 文章 迷い子のみち