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不可視の縁(リーリエ)

 目を閉じると、ぼくに笑いかけてくださるお嬢さまのすがたが浮かぶ。寝ても覚めてもぼくの心を占めるのはリーリエさまたった一人で、それはきっとこれからも、決して揺らぐことなどない。彼女がいるから今のぼくがいて、そうやって少しずつ積み重ねてきた歴…

もしもし、ヒトモシ(セキ)

「なあ――ヨヒラ、いいだろ?」 ぼんやりとした灯りのなか、セキさんが静かに身を寄せてくる。まだ何もしていないはずなのに、耳をくすぐる艶っぽい声と吐息のせいで、あたしの頭はすぐにくらくらしはじめた。「で……でも、明日は朝からご用事があるんじゃ…

心の狭さがバチュル並み(グラジオ)

最近、グラジオさまは一人でお出かけすることが増えた。少し前にできたお友だちと――グラジオさまはお認めにならないが――バトルツリーに挑戦するらしい。照れくさそうにしてはいるものの、ひどく楽しそうなグラジオさま。今までずっと閉じた世界で生きてき…

よくあるやつ(セキ)

「だーれだっ!」 ぽむ。突如視界を奪ったそれは、想像していたよりもふかふかしていて、柔らかな触り心地だった。 ふわ、ふわ、撫でるように目元をくすぐられ、ついつい笑ってしまいそうになる。「誰だろうなあ。オレにはちっともわかんねえぜ」 肩をすく…

傾きだしている(クロード)

誰かといると安らぐなんて、いつからそんなふうに思うようになったのだろう。よもや自分が誰かの隣で安息を得るようになるなんて、今までちっとも考えたことがなかった。編入先の金鹿の学級はなぜだかひどく心地が良くて、賑やかで奔放な気風が、いつしか私の…

花びらのように(ナタネ)

 あなたはとても朗らかで心優しい人だから、周りには自然と人やポケモンが集まってくる。たくさんの笑顔に囲まれて笑うあなたはとても魅力的で、そんなあなたに恋をした、いわばロズレイドに誘われたミツハニーが僕だ。 みんなに慕われているあなたのことを…

頼むから……(ディミトリ)近親愛

「お前は、王妃になっても鍛錬を欠かさないのだな」 湯浴みを終えてやってきたウィノナを出迎え、しみじみと呟く。日頃の鬱憤を晴らしてきたのだろうか、その顔はどこか晴れ晴れとしていた。「当たり前でしょう。確かに私はこの国の王妃だけれど、それ以前に…

全身全霊ポケモンバトル!(レッド)

「いっけー、あられ! 『ハイドロポンプ』!」 ラプラスのするどい『ハイドロポンプ』が、カメックスの甲羅を掠る。すんでのところでかわしたそれは地面を大きく抉り、『あまごい』によって倍増している威力の程を視覚的にも知らしめてきた。 ただ、この天…

答えはどっちだ!(ユウキ)近親愛

「にしても、チイロもめちゃめちゃ料理上手くなったよな……」 テーブルに並ぶ色とりどりの夕食を前に、お行儀よく手を合わせながらしみじみと呟く。ここ数日いただいてるごはんはすべてチイロ手ずからのもので、母のそれを彷彿とさせる味は、ホウエンに残し…

横顔と視線の先は(司)

「――元気にしてるかな」 ぽつりと落とされた輝夜のひと言が、頭の奥に突き刺さったまま抜けないでいる。彼女の思う人が誰なのか、もはや訊ねずともわかってしまったからだ。 輝夜の脳裏に浮かぶ人。彼女にとってはとても大きくて、けれど、向き合う勇気を…

うわさをすればかげうち(レッド/グリーン)

「グリーンさんって、レッドさんのこと本当に大好きですよねー。口を開けばすーぐレッドさんのお話するし、おかげでコエダもレッドさんについてすっごく詳しくなっちゃいましたよ」「……」「あ! そのお顔、もしかして照れてます? 前にグリーンさんが言っ…

緊急事態、ですわ!(フレン)GL

 ああ、ああ! どうしましょう、わたくし、胸が苦しくて眩暈がしますわ―― セテスがすっ飛んできそうな文句を口にして、フレンは桃色に染まった頬を押さえながら、その場に座り込んでいる。彼女が何を考えているのかウィノナにはうまく読み取れなかったが…