頼むから……(ディミトリ)近親愛

「お前は、王妃になっても鍛錬を欠かさないのだな」
 湯浴みを終えてやってきたウィノナを出迎え、しみじみと呟く。日頃の鬱憤を晴らしてきたのだろうか、その顔はどこか晴れ晴れとしていた。
「当たり前でしょう。確かに私はこの国の王妃だけれど、それ以前にあなたの姉であるし、国を守る戦士でもあるわ。せっかく力にも恵まれているのだから、鈍らせてはいけないでしょう」
「しかし……」
「じっとしていられない性分なの。……大丈夫よ、さすがに母という立場にでもなれば、少しは大人しくなると思うから」
 どこか気まずそうに笑うウィノナを前に、ディミトリはそれ以上何も言うことができなかった。
 ただの偶然なのか否か、王妃の懐妊の報がファーガス全土に広まったのは、この出来事からつい三日後のことである。

 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『自分の《武器》は、常に磨け』です
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