もしもし、ヒトモシ(セキ)

「なあ――ヨヒラ、いいだろ?」
 ぼんやりとした灯りのなか、セキさんが静かに身を寄せてくる。まだ何もしていないはずなのに、耳をくすぐる艶っぽい声と吐息のせいで、あたしの頭はすぐにくらくらしはじめた。
「で……でも、明日は朝からご用事があるんじゃ」
「それがよ、どうやら向こうに急用が入ったようでな。昼まで暇になっちまったんだ」
「う……」
「どうせ持て余すくらいなら――いや、たとえ余裕がなかったとしても、好きな女を求めちまうのは男の性なわけよ」
 ゆっくりと、熱っぽさを孕みながらあたしを抱き寄せるセキさん相手に、もはや抵抗する気力なんて残ってはいなかった。
 ロウソクの火が消えた途端、そこに広がっていたのは熱帯夜にも負けないくらいの熱情ばかりだ。

 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『ロウソクを吹き消すと』です
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