不可視の縁(リーリエ)

 目を閉じると、ぼくに笑いかけてくださるお嬢さまのすがたが浮かぶ。寝ても覚めてもぼくの心を占めるのはリーリエさまたった一人で、それはきっとこれからも、決して揺らぐことなどない。彼女がいるから今のぼくがいて、そうやって少しずつ積み重ねてきた歴史が、ぼくたちの間に横たわっているのである。
 だからこそぼくは恐ろしい。この壁を、関係を壊してしまうことが。積み上げてきた信頼なんてきっとぼくの指の動きひとつで簡単に崩れてしまうわけで、そんな不安定で不明瞭な不可視の縁に、ぼくは魂までもを囚われ続けている。

 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『積み上げてきた物』です
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