よくあるやつ(セキ)

「だーれだっ!」
 ぽむ。突如視界を奪ったそれは、想像していたよりもふかふかしていて、柔らかな触り心地だった。
 ふわ、ふわ、撫でるように目元をくすぐられ、ついつい笑ってしまいそうになる。
「誰だろうなあ。オレにはちっともわかんねえぜ」
 肩をすくめるセキの背中には、えー! という愉快なブーイングがふっかけられている。
 もちろん、すべてわかっている。背後にいるのがヨヒラだということ。彼の目を覆っているのが、ヨヒラの連れているニンフィアの触角であること。
 けれど二人がけらけらと楽しそうにしているものだから、それを壊すような無粋な真似ができずにいる。あと数秒だけ付き合ってやるか、と思いながら、可愛らしい声に耳を傾けていた。

 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『目隠し』です
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