吐露
「交流祭、ねえ……」 風呂を沸かすための薪割りに精を出しながら、は独りごちていた。 近々このシアレンスと有角人の集落とで交流祭を行うらしい。長い間いがみ合っていた人間と有角人が手を取り合うため、ひいてはシアレンスの花を咲かせるためだと、近ご…
ルーンファクトリー 君に希う、その行く末にて 花香る町で
呼び声
『 』 誰かに呼ばれている気がしていた。その声は、お母さんが死んでしまってから感じるようになったものだと思う。耳から聞こえる類いのものじゃなくて、もっと内側から、例えるなら頭の中に直接語りかけてくるような。 一歩進めば、その声はひと…
ルーンファクトリー 君に希う、その行く末にて 花香る町で
新たなる旅立ち
昨日までは元気だった。昨日までは健在だった。昨日まではちゃんと、歩いて、笑って、この頭をなでてくれた。 けれどもう、今朝にそんなものはなかった。 ◇◇◇ 「お父さん……」 目の前のお父さんは、もうぴくりとも動かない。……死んではいない…
ルーンファクトリー 君に希う、その行く末にて 花香る町で
希う
『珍しいモンスターを保護したから、デズにも見に来て欲しイ』 そんな誘い文句につられて、オレはガジの家へと出向いていた。 彼はこのドワーフの集落の中でも特に親しい友人で、普段からどこか飄々としている掴みどころのないやつだ。家だってわりと近いほ…
ルーンファクトリー 君に希う、その行く末にて 花香る町で
果てしない序章
『あなたのお父さんはね、本当に優しい人だったの』 それが、母の口ぐせだった。 母はずっと私を守ってくれていた。一般的なフワリとは異なる毛色をした私を、トロくさくてすぐに捕まりそうになる私を、いつまで経っても強くなる兆しを見せなかった私を。 …
ルーンファクトリー 君に希う、その行く末にて 花香る町で
四人目の家族
※子供がいる---「産後の肥立ちが悪い」なんて言葉は、今までの人生でも何十回と聞いてきタ。それは、たとえばゼークス帝国にいた頃のくだらない喧騒だったり、雑貨屋の店番をしていたときの、なんてことない世間話だったリ。 当時のオレは「ご愁傷さマ」…
ルーンファクトリー 短編(ダグ) 胸中にてすくう人
君の面影にキスをした
※5軸--- が息を引き取ったのは、そう昔のことでもない。 頑張った、のだと思う。元来あまり強くなかった体は晩年になるとやはり端々で悲鳴をあげて、あの脆く華奢な体に数多の苦痛を連れてきた。かつて彼女の祖母がそうであったように、少しずつベッド…
ルーンファクトリー 短編(ダグ) 胸中にてすくう人
仲良きことは美しきかな
「あ、ねえ! フレイさん、ダグさんの話知ってる?」 自室から出てきて、直後。ドアをくぐった目の前をちょうど通りかかったらしいキールが、明るく話しかけてくる。 相変わらずの愛らしい笑みは見る人の毒気をすっかり抜いてしまうようで、さしものフレイ…
ルーンファクトリー 短編(ダグ) 胸中にてすくう人
初恋、初キス、初嫉妬
「妬いてなんかないわ」 そう出し抜けにつぶやくはぷくりと頬を膨らませている。まごころ雑貨店の店先にて、彼女はここぞとばかりにダグへと視線を突き刺していた。 どことなく呆気にとられたダグに思い切り詰め寄ってみるが、しかし彼は依然として身に覚え…
ルーンファクトリー 短編(ダグ) 胸中にてすくう人
あなたのほうよ
「だから無理すんなって言っただロ!」 見慣れた木造の天井を眺めるあたしに向かって、ダグはため息まじりに呆れたような声を出す。 ふかふかのベッドは温かいし、ダグは隣にいてくれるうえ、言葉は少し乱暴でもあたしを気遣ってくれているという、個人的に…
ルーンファクトリー 短編(ダグ) 胸中にてすくう人
覚えているものだから
「ねえ、ダグ。フレイが最近おもしろい木を育ててるって話、知ってる?」 それは火曜日の昼下がり。退屈な店番でふあふあとあくびを繰り返すダグの目を覚ましてやろうと、は商品を整理する手を止めることなく、先日ヴォルカノンに聞いた話を彼に向けて振った…
ルーンファクトリー 短編(ダグ) 胸中にてすくう人
黄金の欠片
黄金に「誰か」の面影を見た。 その「誰か」が誰なのか、擦り切れた記憶のページをめくってなんとか手繰ってみようとする。おそらく従軍時代の記憶だ。頭の片隅にいるのはもはや顔も朧気になってしまった男であるが、ただ無機質な日々を送るなか、「故郷に…
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