さいごの鎹
冷たい風が吹きすさぶなか、ぼんやりと一人佇んでいる。ぼくの目の前にあるのは、誰の仲間にも入れてもらえなかった人間が丁重に眠る、ひどく小さくて粗末な山だ。 この山の下には、ぼくが恋い慕ってやまなかった存在が眠っているが――しかし、これを暴く…
一片冰心 原神 文章 瑕
つかの間のワイナリー
「。これを君に」 隣に腰掛けるディルックが小瓶を差し出してきたのは、錬金ショップから帰ってきて、つかの間の休息時間を共に過ごしていたときだ。 やさしく手のひらに乗せられたそれは、昼間に目にした錬金薬の数々によく似ている。愛らしい猫の形をした…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
モンドの風と共に
「えっと……うん、土の状態は問題なし。水はけも良くて、日当たりも良好。それから――」 栽培エリアでチェック作業に励む背中を、調合の合間に覗き見る。ディルックと共にやってきたが、バインダー片手にエリアをくるくると練り歩いているのだ。 今回の研…
Admire 原神 短編(ディルック)
「セシリアの花の微笑み」
「旅人。先ほどのものとは別に、もうひとつ頼まれてほしいことがあるんだが」 空の手渡した錬金薬の瓶を揺らしながら、ディルックは優雅にそう言った。 先立ってのやり取りとはまた違った風合いを乗せた彼の物言いに、空はちいさく微笑みながらうなずく。彼…
Admire 原神 短編(ディルック)
しあわせの残り香
璃月には無数の人々が行き交っている。 この国で生まれ育った者、他国から商売にやってきた者、祖国を追い出された者、のんびりと旅行に勤しむ者……それらすべてがにとっては等しく愛しい存在で、彼はこの地に足を踏み入れるすべての者たちを愛していた。…
原神 短編(嘉明2)
雌のさえずり
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ポケモン 柵にとらわれて 短編(ユウキ)
眠りこけてる場合じゃない
――嘉明のバカ! だいっきらい……! 見知った少女が泣きながら叫んでいる。 痛ましいその様子は見覚えのありすぎる光景で、もはや懐かしさすら感じるくらいだ。人としての良心のみならず郷愁の念まで刺激するそれは、心地よく浸っていたはずの睡眠をぴ…
原神 短編(嘉明)
終わりの朝日
フォドラは夜明けを迎えた。ネメシスを打ち倒し、壁を壊すための準備が整ったのだ。このままうまくいけば、クロードを長年苦しめた偏見という名の脅威を、そう遠くない未来になくすことができるだろう。 おのれに流れるフォドラの血はもうさんざ利用した。…
こがねと縁(戦争編) ファイアーエムブレム 三日月の裏側
頬をなぞる綺羅
計算の通り事が運べば、おそらく決戦の日は明日。 明日になればネメシス率いる大軍勢がこのガルグ=マクへたどり着き、復讐の炎を撒き散らして灰燼の野を作らんとするのだろう。雑草のひとつも生えない不毛の大地が築かれることだけはなんとしても避けなけ…
こがねと縁(戦争編) ファイアーエムブレム 三日月の裏側
桃色吐息は友の色
ローレンツの言葉を疑うつもりはないが、しかしクロードの手の内に真実を確かめる術は多くなかった。 なぜなら彼がクロード=フォン=リーガン本人であるという時点で、「がクロード以外の人間と話しているところ」を見るのが難しいからだ。は人の気配に敏…
こがねと縁(戦争編) ファイアーエムブレム 三日月の裏側
薔薇は大地に根づくもの
「おい、クロード。君、ちゃんとさんのことを見てやっているのか?」 渡り廊下でのすれ違いざま、潜めて声をかけてきたのはローレンツだった。 その口振りから察するに――否、彼の人柄を思うに今回は決してやっかみのたぐいではなく、心からを、そしてクロ…
こがねと縁(戦争編) ファイアーエムブレム 三日月の裏側
まるで、星が降るような
「こんにちは、盟主様。ご機嫌いかがかしら?」 小気味よく扉を叩く音は二回。返事をする前にかけられた声色はいやに落ちついていて、クロードは少々目を丸くしながら応対のために立ち上がった。 けたたましく取っ手を鳴らしながら扉を開く。そこにいたのは…
こがねと縁(戦争編) ファイアーエムブレム 三日月の裏側