Interlude

あとがき

たまにあるあとがきのコーナーです。今回はちょっと書いておきたいことがあったので設置しています。あやふやなまま終わったアゼルくんと夢主の血縁関係については、原作で言うところのクロード神父とシルヴィアみたいなイメージでいます。異母兄弟かもしれな…

いつもそうして

 わたしのなかで再び頭をもたげはじめた、セリス様への恋心。 ひとたび目をさましたそれはみるみるうちに膨らんでいって、一度抑圧されたせいなのか、ともすると以前よりも大きく主張しているような気さえする。その怪物はいつもわたしの耳の隣に心臓を持っ…

天色の波

 ゆら、ゆら、ゆら。わたしは、まったくおぼつかない足取りで夜の城内を歩いていた。 眠れなかった、わけではない。単純に目が覚めてしまったのだ。近頃はどうにも睡眠が浅くて、ちょっとしたことでついつい目を覚ましてしまう。 そのまま寝返りばかり続け…

ふわり、光る

「ねえ、アゼルは“恋”って何だと思う?」 行軍の合間、出し抜けにが問うてくる。さっきまで上空にいた天馬は知らぬ間にすぐ傍へと降下していて、アゼルは馬の手綱を引きながら、彼女の言葉に耳を傾けた。「恋、って……どうしたんだい、いきなりそんなこと…

時に微笑ましくもあり

「交差」のあとくらい--- なんとなく、胸騒ぎがした。 否、それはともすると変化の予兆であったのかもしれない。うまく言語化することはできないが、それでも今からおのれの身に何かしらの刺激が訪れるであろうことを、レックスは静かに察知していた。そ…

そうしてぼくらは蓋をした

 もちろん、そのときのアゼルにシグルドたちの話を盗み聞きするつもりなんてなかった。たまたま部屋の前を通りかかった際、つい、耳に入ってしまったのである。 彼らが言っていたのは、アルヴィスが当主になってすぐのヴェルトマー家についてだった。父が―…

きみを守るよ

 マーニャが戦死した。 シレジアが天馬騎士団マーニャ隊は、同じく天馬騎士団に所属していたディートバ隊や、ユングヴィ公子アンドレイ率いるバイゲリッターに立ち向かい――そして、あえなく散ってしまった。 さしもの天馬騎士たちも天敵である弓兵相手に…

花綻ぶ微熱

 草芽の色をしたは、さながら春の象徴であるかのような女性だった。 彼女がそこにいるだけで、周りに笑顔の花が咲く。マーニャ隊の仲間だけでなく、時には城下の市民までもが彼女にとっては友だちだった。 彼女がそこにいるだけで、皆の表情やまとう空気が…

交差

「……どうしたのよ、またそんなにぼうっとして」 セイレーン城の中庭にて、木陰の下で空を眺めていたときだった。天馬の羽音が聞こえた数分後、ひょこんとが顔を覗かせたのである。 シレジアの冷気に霞んだ空がいっぱいに広がった視界のなか、突然に飛び込…

もえる草芽の色をした、

 シグルド軍がシレジアに落ち延びてから、気づけば半年の月日が経とうとしていた。 寒冷な気候はシレジア以南で生まれ育った諸君に厳しく当たることもあったが、その無慈悲な冷たさもラーナ王妃の温かさによっていっさいが融解する。 苦難ばかりでままなら…