原神

あとがき

ちょっと補足が必要な感じの終わりになったので、たまにあるあとがきのターンです。今回も以前書いた短編からお話を膨らませていく感じでしたが、正直なところ短編の時点で夢主が死ぬことは決まっていました。そのうえで「どうせ死ぬんだからめちゃめちゃ人騒…

辟斐?繧医≧縺ェ蛹也黄

 夢中になって駆けている最中、とうとうわたしの両足はもつれ、その場に倒れ込んでしまった。璃月港を飛び出してから気づけば人気のない郊外まで出てきてしまっていたらしく、転んだわたしを助けてくれる人なんて、当たり前だがどこにもいない。 痛む膝を押…

誰よりも殺したい影

「こんにちは、お嬢ちゃん。また会ったね」 その人は、今日も今日とて飽きることなくわたしに話しかけてきた。 先日知り合ったばかりの「公子」タルタリヤは――タルタリヤさんは、何かにつけてわたしに関わってくるようになった。道端ですれ違ったときはも…

どうしていつも私から

 ――ウェンツァイはずるい! 喉から出かかった本音を、既のところで飲み込んだ。 今、の目の前にはケラケラと楽しそうに笑う嘉明や、そんな彼にじゃれついて遊んでいるウェンツァイの姿があった。二人が仲睦まじい関係であることは誰の目にも明らかであり…

スメールシティのささやかな大事件

 ――今日は本当についてない日だ。 否、途中まではいつもどおり、平々凡々な一日だった。いつもどおり起きて、いつもどおりアビディアの森をパトロールして、いつもどおり魔鱗病や病床に伏す人々を診る。老若男女の苦しみをできるだけ取り除き、子供たちの…

「幼い筆跡の手紙」

「ディルックさん、何を見てるんですか?」  寝室のベッドに腰掛けるディルックが書簡に目を通しはじめたのは、寝る準備を早々に済ませ、心地よいまどろみを待ちわびている頃だった。 疲れが溜まっていることを指摘されたおかげで、今夜ばかりは英雄業もお…

まんまるちゃん

 アカツキワイナリーの北部には、ふくふくの雪ヤマガラがたくさん生息している。住んでいる地域のせいか比較的人懐っこい彼らは、いつしかにとって顔馴染みの友人のような存在となっていた。「こんにちは」と挨拶すれば、元気よくさえずりを返してくれる。そ…

釣り糸の向こう側に

 ぽちゃん。あからさまな音を立てて落ちくれた釣り針に、背後に控えていたタルタリヤが肩をすくめたのがわかった。集まっていた魚たちは突然の無法者によってさっと四散し、目の前にはただひたすらの静寂が残るのみである。 ――失敗だ。この結果が良くない…

あの日の裏側で

「旅人さんへのプレゼント……ですか?」 神妙な面持ちのディルックを前に姿勢を正したのは、ほんの五分ほど前のことだった。 こんなにも難しい顔をしているなんて、何か深刻な事件が起こってしまったに違いない――そう覚悟を決めて話を聞くと、どうやら先…

大切で特別な一日

 近頃、カレンダーを見ながらため息を吐く回数が増えた。理由はひどく簡単なことで、月末に控えた一大イベントに向けての準備が、何も整っていないからだ。 今月末――来たる4月30日には、他でもないディルックさんの大切なお誕生日がある。わたしにとっ…

おわりの詩

 ――もしもわたしが、いなくなったとして……重雲は、わたしのことを忘れないでくれる?―― 今際のわたしが発した言葉は、ともすると重雲にとって、ある種の呪いとなってしまったかもしれない。なぜならば、倒れ伏す直前に見た重雲がわたしのことを想い、…

いつだって一番そばに

 家を継ぐ者として、涙腺の緩さは大敵だと思っていた。  自分は幼い頃からひどく泣き虫で、それこそ少し驚かされたくらいで簡単に涙が出てしまうような子供だった。 特段気が弱いわけではないのだが、ちょっとした刺激ですぐに涙がこぼれてしまう。嬉しい…