冬枯れの花嫁

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 夢中になって駆けている最中、とうとうわたしの両足はもつれ、その場に倒れ込んでしまった。璃月港を飛び出してから気づけば人気のない郊外まで出てきてしまっていたらしく、転んだわたしを助けてくれる人なんて、当たり前だがどこにもいない。 痛む膝を押…

誰よりも殺したい影

「こんにちは、お嬢ちゃん。また会ったね」 その人は、今日も今日とて飽きることなくわたしに話しかけてきた。 先日知り合ったばかりの「公子」タルタリヤは――タルタリヤさんは、何かにつけてわたしに関わってくるようになった。道端ですれ違ったときはも…

冬国の香り

 わたしが璃月へやってきたのはいわゆるただの気まぐれで、それほど大した理由じゃない。 まず、わたしはあの町から――甘くて優しい夢を見せてはそれらをすべて焼き尽くした、あの牢獄から抜け出したかっただけ。しあわせな思い出のいっさいは暴風によって…