なまえ①→妹
なまえ②→兄
クールガールの恋心 / 完結済
マリィの恋の話。夢主はネズの親友
- 君へのエール
「ねえ、お願いがあるんだけど」 控えめな、けれども凛とした呼び声にぼくはゆっくりと振り返った。向いた先にいたのは伏し目がちにもじもじと下を見ていたマリィであって、彼女はぼくの振り返る気配を察知してすばやく顔を上げる。 彷徨っていたらしい視線…
- 瞳の奥に想うもの
「よ、おまえはマリィのことをどう思っているんです」 スパイクタウン郊外にて、やけに群がってくるジグザグマをよけながら、ネズは事もなげにそう言ってみせた。妹の恋愛事情に首を突っ込むのはナンセンスだな、と以前二人で話しあったばかりなのであるが、…
- 空とおんなじ君の色
「ね、ね。マリィはお兄ちゃんのどういうところが好きなの?」 わたしがぐんと顔を近づけて言うと、マリィはなんだか面食らったように後退った。普段はあまり動かない眉をほんの少しだけ顰めて、べ、別に好きじゃなか……とバレバレの嘘をついている。「好き…
- 少女にとっての決戦前夜
ブティックというのはいいものだ。 わたしの出身地であるターフタウンにはブティックらしいブティックがなくて、こんなにオシャレで可愛い服を見ることなんてほとんどなかった。少し垢抜けたファッションの人はすぐにジムチャレンジャーだと気づけるほどあ…
- 君の恋路はアスファルト
「じゃあ、。あたし行ってくるけん……!」 右手と右足を同時に出さん勢いのマリィは、ふわりと良い香りを漂わせながらわたしに背を向けて歩いていった。目指すはエンジンシティの駅、ひいてはお兄ちゃんの待つブラッシータウン方面である。 今日は二人のデ…
- やわらに震える
なんとなく、心が浮つくような気がする。足取りがふわふわと跳ねて、世界がどこかキラキラして見えて。花屋で花束のひとつでも買ってやろうかと思う程度には、いささか今日のぼくは浮かれているようだった。 彼女が――マリィが喜ぶのなら、と一瞬本気で花…
- 「亀裂」
「――ぷはあっ! ボリュームすごいね、ここ……!」 水分補給に選んだのは、モモンのみをふんだんに使った園内でも一番人気のフラッペだった。あたたかな気温もあってひときわ火照ったぼくたちの体を、染み渡る冷たさがしっかりと冷やしてくれる。「本当に…
- 綻ぶようにうなずいて
ぼくが最低な言葉を吐いた途端、マリィは澄んだアイスブルーを大きく見開いた。え、と口を押さえる動作もただひたすらに愛らしくて、けれど、とんでもないことを仕出かしたという後悔も生まれて。結果、一瞬で周りの喧騒が無音と化す。 人もポケモンもごっ…
迷い子のみち
↑の派生、マサルとの恋の話。夢主はマリィの友人
- 押しつぶされた心に
――気分転換をしてやろう! そう思ったわたしが行き先に選んだのは、つい先日オープンしたばかりの、シュートシティの遊園地だった。一人で来るにはあまりに不釣り合いな場所だけれど、マリィを見送ったあとのわたしの足は、なぜだかここに惹かれてしまっ…
- 君の背中を引き裂いて
「あれ……じゃん。どうかしたの?」 にわかに聞こえた、わたしを呼ぶ声。その優しくも独特な雰囲気に、下に向いて落ち込んでいた気持ちを一気に引き戻されるような感覚に陥った。 背後からかけられた声は、変声期を済ませたばかりの少年が持つ特有の空気を…
短編 / 兄
ネズ
- うらやまぬ光
数週間前、とうとうネズはスパイクタウンのジムリーダーに任命された。 その件について何か異議や文句があるわけではなかった。むしろ正当な評価であるとすら思うほどで、リーグスタッフの決定も、それに頷いた彼自身も、ぼくにとっては納得と言うほかない…
- ちぐはぐな二人
「ネズとマリィは本当に仲が良いよね~」「まあ……否定はしませんが。羨ましいならおまえもと仲良くすればいいじゃないですか」「え、なんで?」「は?」「冗談はよしてよ、なんでぼくがあの子と仲良くしなくちゃいけないんだい? ……まあ、あの子がマリィ…
マリィ
- くらむ、くらい
「さんもお酒飲むんだ」 パンくずのひとつも残っていない食器を運んできたマリィが、出し抜けにそう持ちかけてくる。 なんのことだと彼女の視線を追ってみると、そこにあったのは食器棚の端にぽつねんと置かれていた酒瓶だ。半分ほどまで減ったそれに興味が…
- メリーメリー、クリスマス
バウタウンにあるシーフードレストラン防波亭は、オールシーズンどこをとっても賑わうような人気の店だ。 かつてジムチャレンジ真っ只中だった頃に素通りしたこの店へ、よもや今頃になって訪れることになるとは果たして誰が予想しただろうか。潮の香り漂う…
- 踊れや躍れ
たたん、たたん、たん、たたん。スパイクジムのバトルフィールドに、リズミカルなタップダンスの音が鳴り響く。 軽快なステップを追う瞳は爛々と輝いていて、興味津々といった具合に思わず両の頬が緩んだ。ついさっきまでジムリーダーとして鋭利なバトルを…
- お嬢様ネットワーク
「ねえ……さんって、スイーツは好き?」 それは、ひときわ賑わうカフェでのんびりしているときのことだった。お気に入りのモモンソーダに舌鼓をうっていたマリィは、あ、と思い出したように声をあげたあと、そうしてぼくに訊ねてきたのだ。 立派なバニラア…
短編 / 妹
ネズ
- こんなにもひかる
ステージの上で声を張り上げるネズさんは、普段の辛気臭そうな姿とは打って変わってきらきらと輝いて見えた。 どこか後ろ向きで切なくもある、けれど胸を打つような歌詞にあわさるのはかき鳴らすようなメロディで、コーラスとして参加しているタチフサグマ…
マサル
- break time
※数年後設定 --- チャンピオンとなって早数年。ぼくは利便を考えて、つい最近ナックルシティに引っ越した。 そらとぶタクシーといった交通手段こそあるが、それでもやはりチャンピオンの職務というのは思っていたより何倍も忙しく過酷だ。ひどいとき…
- ハートアメざいく
「――ん、うん。わかった」 どこかくすぐったそうに肩をすくめるその姿には、「あのダンデを打ち倒した稀代の新チャンピオン」という謳い文句で日夜騒がれた際の威厳や風格など、微塵も感じられなかった。 もちろんそれは彼をくさした印象ではなく、まだま…
- 湯けむりの奥
――するり。 細い肩に指をすべらせてやると、くすぐったそうに身をよじる。少し前ならなにするの! と怒られていただろうに、ここ数年でぼくの突飛なスキンシップにもすっかり慣れてしまったようで、過剰に拒否されるようなことはなくなった。 少しだけ…
- 大丈夫だよ、ここにいるから
ねえ、。ちょっとだけ体貸して――言うやいなやのマサルが背後から覆いかぶってきたのは、なんてことない昼下がりのことだった。 突然襲うずっしりとした重みに面食らうも、しかし、がそれを撥ねつけるようなことはなかった。ただ静かに彼を受け止め、おだ…
- チャンピオン・マサルの目撃情報
「いえ、れっきとした恋人ですけど」 臆することなく答えるマサルに、マイクを差し出すインタビュアーは目を見開いて呆気にとられていた。 もちろん彼女だけでなく、背後でカメラを構えたカメラマンや、若きチャンピオンに黄色い声をあげるギャラリーの群れ…
その他
- あいしてる!
ラテラルタウンでカセキをもらった。ワイルドエリアで拾ってもきた。今の手元にあるのはいびつな複数のカセキで、これらをどうするべきか考えあぐねた結果、ポケモンセンターにいたトレーナーにもらったアドバイスを参考にしようと思ったのだ。 ――6番道…