ふりだしの抱擁
――誰かの呼ぶ声がする。聞き馴染みのある声にそっと目を開けると、そこにはひどく気遣わしげにこちらを覗き込むが現れた。 突然のことに何も咀嚼できぬまま瞬きを繰り返し、少しけだるい体を起こす。ぼくが気づいたことに安心したのかはわっと声をあげな…
一片冰心 原神 文章 瑕
02
――今週の土曜な。問題ないで、空けとくわ。 スマホロトムを介して送ったメッセージの返事が来たのは、送信してから数時間後の、静かな夕暮れの頃だった。思えばあの日も人を待たせていると言っていたし、なかなかどうして多忙な身のうえであるのだろう。…
flurry ポケモン 文章 香らぬ花と秘する爪
01
わたしには、たったひとりの弟がいる。 彼はとてもひたむきで、努力家で、時には眩しいくらいの光を放つ。まるで陽光に照らされた雪景色のような子だ。わたしにとっては文字通り世界の中心にも等しく、誰よりも何よりも大切で愛おしい存在である。 あの子…
flurry ポケモン 文章 香らぬ花と秘する爪
あまったるくて柔らかな
チリは迷っていた。来たる二月十四日のあまったるいイベント――街がにわかに色めき立つ、バレンタインデーについて。 他地方出身のチリにはあまり馴染みのない文化だが、どうやらパルデア地方のバレンタインは男性のほうから贈り物をする日であるらしい。…
flurry ポケモン 文章 短編(チリ)
あなたのためのパンケーキ
名前を呼ばれるのが好きだ。普段明るくハキハキとした声がほんの少しだけ柔らかくかすれて、あまえたふうに変わる瞬間が。それによって形づくられた、かけがえのないその響きが。「四天王のチリ」は、あまいアメを携えながらも、ことポケモンやバトルにたい…
flurry ポケモン 文章 短編(チリ)
結局許してしまったわ
ある朝。チリがリーグ本部に顔を出すと、そこには眉間にシワを寄せてもごもごしているポピーの姿があった。 普段朗らかに過ごしているポピーが顔をしかめているのは少し珍しいことで、彼女と親しくしているチリにそれを見過ごすことはできず、いつもどおり…
flurry ポケモン 文章 短編(チリ)
もうすぐそこに
「なあ、。また課外授業が始まったって話と――あと、アカデミーに新進気鋭の転入生が来たって話、知っとる?」 唐突に話しかけてきたチリの背中へ、ゆるりと視線を向ける。視界の端に映った観葉植物が少し弱っているように見えて、途端、彼らの肥料を買い足…
flurry ポケモン 文章 短編(チリ)
永遠のように(ジェローム)
それは、ひどく穏やかな昼下がり。ミネルヴァちゃんとお空の散歩を終わらせて、ジェロームと二人、のんびりと過ごしていたときのことだ。「やっぱ、ジェロームの顔かな。できれば仮面は取っててほしいけど」 出し抜けに口を開いたわたしに、ジェロームはひ…
ファイアーエムブレム 文章 短編(ジェローム)
この世がもたらす何よりも(エメリナ)※GL
「……これ、どうぞ」 目の前に差し出されたのはぐちゃぐちゃの花冠だった。おぼつかない手つきで作ったのだろうことがよくわかるそれは、幼い頃にが好きだと言った花によく似たもので彩られている。 フェリアとイーリスでは気候の差もあって自生する植物に…
ファイアーエムブレム 文章 短編(エメリナ)
誓いの弓立(ジェローム)
ジェロームがひどく優しい男であるということを、恋人であり幼なじみでもあるわたしは深く理解している。 彼は真っ当な感性を持った常識人だ。まあ、仮面の趣味やそのあたりは少し人と違ったものを持っているけれど……それでも彼が面倒見の良い優しい人間…
ファイアーエムブレム 文章 短編(ジェローム)
青と紅(クロム)
※死ネタ、息子もいる --- 凶刃が息子へ見舞われんそのとき、は半ば衝動的に駆け出していた。 それが息子のことを想っての行動なのかと問われたら、おそらくは返す言葉を持たないだろう。彼女はもはや限界だった。最愛かつ無二の幼なじみを目の前で亡…
ファイアーエムブレム 文章 短編(クロム)
おはよう、ハニー(ルキナ)※近親愛
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ファイアーエムブレム 文章 短編(ルキナ)