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膝の上の秘密(タルタリヤ)

「……ねえ、今日はどうしたの? もしかしてなんか、調子悪い?」 無言で膝にかじりついているオレンジ頭を撫でながら、ミラはちいさく息をつく。 普段よく動く舌は今日ばかりはその力をふるわず、活発な彼らしからぬ静寂をその場にもたらしていた。何度頭…

屈折(蛍/タルタリヤ前提)GL風味

 私を前にしたミラは、悪意や嫌悪をいっさい隠さずそれらすべてを顔に出す。憎悪にまみれたその目はきっと他の誰にも見せないもので、初めこそ鬱陶しくて仕方なかったはずなのに、いつしか私はその刺激的な目が向けられるのを待ちわびるようになっていた。 …

仮面の裏には(コレイ)

 何も知らない無垢な少女の背中を見ながら、ふと物思いにふける昼下がりがある。 スメールのまばゆい太陽を、満ちあふれる雨林の自然を目いっぱい浴びながら少しずつ前に進もうとしている少女にたいして、ダスラはいつも後ろ暗い感情を抱いていた。ひとまわ…

だめになっちゃう(ディルック)

「君は、すぐにほっぺたがリンゴみたいになるね」 わたしの目をまっすぐに見つめながら、ディルック様はひどく満足気にそう言う。至近距離にある彼の顔はわたしには刺激が強くて、今にも爆発してしまいそうなほど、この心臓は早鐘のように動いていた。「だ、…

わたしにできること(リネ)

 腕のなかで丸くなった少年の、無防備な後頭部を撫でる。規則的なように聞こえる寝息は巧妙な形をしているが、他人との共寝に慣れ親しんだイネスにとっては脆弱な偽りでしかなかった。 こうして寄り添ってベッドに入ってから、ゆうに一時間は経っているはず…

不格好な背伸び(コレイ)

「先生っ、今日は何を教えてくれるんだ……!?」 朗らかに振る舞う声と共に、可愛らしい顔がひょっこりと覗く。新芽を思わせる髪がガンダルヴァー村の温風に揺れて、陽光を反射しながら輝いていた。 いつものコレイなら宿題や勉強には少しばかり難色を示す…

食事とは(タルタリヤ)

 ――もぐ。ゆっくりと、文字通り噛みしめるように動くまあるい頬を見つめる。普段であればすっきりとしたラインを描く彼のそれが、食事のときだけ子供のように膨らむ様子を見るのが好きだった。 近頃は執行官としての職務がやけに忙しいらしく、落ちついて…

何回目の君であれ(ディルック)

「ディルックさん、『一生のお願い』って言ったことあります?」「まあ……子供の頃に、ガイアを巻き込んで。父上相手にももちろんだけど、いつだったかアデリンにも言った覚えがあるよ」「そうなんですか? ふふ、なんだか可愛らしいですね」「む……それで…

目の前にある万華鏡(タルタリヤ)

 タルタリヤの横顔は、まるで万華鏡のように見るたび姿を変えてゆく。 執行官としての冷たい視線、好敵手を前にしたときのギラついた横顔――家族からの手紙を読むときの、あったかくて優しいお兄ちゃんの顔。 わたしはそれなりに近いところで色んなタルタ…

最低の朝だ(重雲)少し背後注意

 いかがわしい夢を見た。桃琳をおのれの下に組み敷き、不貞の限りを尽くす夢を。 夢のなかの自分はまるで暴君のように彼女の体を蹂躙して、滴る雫の反射光や耳をくすぐる嬌声が、今も五感の奥深くにこびりついている。 しかし、跳ねるように目を覚ました今…

欲望(夜蘭)GL下ネタ

「私だって、本当は夜蘭様を抱く側にまわりたいんです。抱かれる側は性にあわない……! でもあの方は私にとって上司であり神のようなお方ですから、私のような下賤の民が穢していい存在ではないのです……っ!」「えっ、じゃあ本当は嫌々抱かれてるんですか…

面影(ウェンティ)

「ねえ、ハーネイア? 君は、ライアーに覚えはある?」「えっ? えーっと……そうだなあ。お姉ちゃんがたまに弾いてたけど、よっぽど大事だったのかわたしは全然触らせてもらえなかったんだ。だから全然だよ」「そっか――ふふ、そうだよね。……当たり前だ…