だめになっちゃう(ディルック)

「君は、すぐにほっぺたがリンゴみたいになるね」
 わたしの目をまっすぐに見つめながら、ディルック様はひどく満足気にそう言う。至近距離にある彼の顔はわたしには刺激が強くて、今にも爆発してしまいそうなほど、この心臓は早鐘のように動いていた。
「だ、だって……まだ……」
「まだ?」
「その……やっぱり、なんだか夢みたいで。全然、信じられない、から……」
 消え入りそうなわたしの声を聞いたディルック様が、ソファの上でさまよっていたわたしの手に優しく触れた。おおきな手のひらがわたしのそれに合わさって、指を絡めて、握り込む。それだけでわたしの体は沸騰したみたいに熱くなって、まるで頭から湯気でも出そうなくらいだった。
 たまらずわたしがキツく目を瞑って顔を背けると、ディルック様は小さく吹き出してわたしからゆっくりと距離をとる。そのままソファから立ち上がり、こちらに背を向けて扉のほうへと歩き出した。
 わけもわからないままその背中を見送っていると、ディルック様はドアノブを引きながらこちらを振り返って、いたずらっぽく笑ってみせる。
「ハーネイア、君は本当にかわいいね」
 その甘ったるい表情を見せつけられたわたしは、とうとう何も考えられなくなり――ディルック様が扉を閉めるその瞬間まで、呼吸すらままならないほどとなっていた。

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