わたしにできること(リネ)

 腕のなかで丸くなった少年の、無防備な後頭部を撫でる。規則的なように聞こえる寝息は巧妙な形をしているが、他人との共寝に慣れ親しんだイネスにとっては脆弱な偽りでしかなかった。
 こうして寄り添ってベッドに入ってから、ゆうに一時間は経っているはずだが――別に安らいでいないわけではないはずだ。自惚れのようにも聞こえてしまうが、イネスは二人きりで過ごすときのリネが緊張の糸を緩ませていることを知っている。リネットとは比べものにならないだろうが、それでも自分の前でしか見せないリネの顔を、イネスは何度も見てきたのだ。
 ならばなぜ。どことなく張りつめたリネの背中を優しくさすり、イネスは静かに思案を巡らせる。……きっと何か不安があるのだ。彼は何かを抱えている。怖いものがある? 避けたいお仕事がある? やりたくないことをやらなければならない? その真偽はわからないけれど、であれば自分がやるべきことは、迷いや恐怖で強張ったリネのすべてを受け止めて、ゆっくり撫でてやることだろう。
 いつだって彼に安らぎを与えてあげたい。「大丈夫だよ」と伝えてあげたい。それが――それこそが、出会ったときから変わらない、たったひとつの願いなのだから。

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