仮面の裏には(コレイ)

 何も知らない無垢な少女の背中を見ながら、ふと物思いにふける昼下がりがある。
 スメールのまばゆい太陽を、満ちあふれる雨林の自然を目いっぱい浴びながら少しずつ前に進もうとしている少女にたいして、ダスラはいつも後ろ暗い感情を抱いていた。ひとまわり以上も年の離れた大人に粘ついた好意を向けられて喜ぶ人間なんてそうそういない。まるで警鐘のように鳴り響く理性という名の叫びは四六時中ダスラの耳を叩くのに、それでもこの気持ちはいっさいおさまる気配を見せないし、それどころか日々勢いを増していた。寝ても覚めてもコレイのことばかり考えて、いつまで経っても断ち切れそうにない――そもそも断ち切るつもりもないと言えばそうだが――こんなにも愚かで意地汚い自分を前にしたとき、果たしてコレイは何を思うのだろう。そんな恐怖を腹の奥に抱えながら、今日もダスラは「理想の優しいお兄さん」を演じるため、笑顔の仮面を被るのだ。

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