食事とは(タルタリヤ)

 ――もぐ。ゆっくりと、文字通り噛みしめるように動くまあるい頬を見つめる。普段であればすっきりとしたラインを描く彼のそれが、食事のときだけ子供のように膨らむ様子を見るのが好きだった。
 近頃は執行官としての職務がやけに忙しいらしく、落ちついて包丁を握る余裕もないと零していたのはいつだったか。見かねたミラが家事のいっさいを請け負うと言い出したのがその少し後であるから、もうすぐひと月くらいにはなるのかもしれない。
 始めこそ食材を切るのですら覚束なかったが、最近は少しだけ慣れてきたように思う。ミラ自身の故郷の料理もさることながら、先日部下からもらったレシピを頼りに作るスネージナヤの郷土料理も、なかなか様になってきたのではないか。
 ちら、とタルタリヤの顔を覗き見る。テーブルのうえに広がるのは前述の郷土料理であり、以前タルタリヤが好きだと言っていたレシピだ。北国らしく体の芯から温まるようなそれはこの温暖な気候には似つかわしくないかと思えたが、ここ数日ひどく疲れている彼に少しでも元気になってほしかった。
 ミラがゆっくりと視線を上げて彼の表情をうかがうと――そこにはまるで少年のような、無邪気な笑顔が咲いていた。
「うん、うまい! どうしたの、俺の知らない間にずいぶん腕を上げたようだね」

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