骨の髄まで君が好き
アッシュがガスパール領の家督相続を認められて、早一年が経とうとしていた。 相変わらず日々は目まぐるしいものであるが、それでも二人で支えあって、懸命に毎日を生きている。戦禍によって傷だらけになった領内も少しずつ回復の兆しを見せ始めていて、だ…
ファイアーエムブレム 短編(アッシュ) 細氷に光る懐刀
きっと、いつまでも
「そうか、お前の背中はこんなにも広かったんだな」 感慨深そうな声に振り向いてみると、そこには左の眼を細めて微笑うディミトリの姿があった。 いつの間にそんなところにいたのか。アッシュは半ば飛び跳ねるように彼のもとへと駆け寄り、見上げるほどの身…
ファイアーエムブレム 短編(アッシュ) 細氷に光る懐刀
大好きな、僕の
「、これ。僕からの気持ちだよ」 ガスパール城の渡り廊下にて、はい、との目の前に差し出されたのは鬱金香の花束だ。ひどく上等な造りをした包装紙は淡い水色に染まっていて、色とりどりの花を彩るに相応しい色と質感である。 ふた桁にはのぼるであろう本数…
ファイアーエムブレム 短編(アッシュ) 細氷に光る懐刀
飛竜の節17の日
※数年後 アッシュが城主となってからのガスパール城は、以前よりも花の香りが強くなっているらしい。 もともとロナート卿が花を好んでいたこともあり、城内のあちこちに草花を飾ったり可愛らしい花壇を構えていたりと、この城は非常に豊かな景観で名の知れ…
ファイアーエムブレム 短編(アッシュ) 細氷に光る懐刀
綻ぶ笑顔と恋の花
アッシュが駆けつけたとき、そこにはもはや惨状と言っても差し支えないような空気が満ち満ちていた。 母親の静止も虚しく泣き叫ぶ幼い少女。顔には出ないがおろおろと慌てふためく。2人を交互に見比べては頭を下げたり子を叱ったりする母親。 きっとアッ…
ファイアーエムブレム 短編(アッシュ) 細氷に光る懐刀
僕だけの姫、私の騎士
「そうだ、僕、騎士になったらやってみたいことがあったんだ」 出し抜けに声をあげたアッシュはその言葉でもって、遠く空を見上げていたの意識を引き戻した。はたと思いついたような顔はなんとなくの自信と相変わらずの誠実さに満ちていて、彼の言うことなら…
ファイアーエムブレム 短編(アッシュ) 細氷に光る懐刀
母を思う手
ディミトリの朝は、ぼんやりとした頭痛から始まる。 これでも一時期よりはずいぶんマシになったほうだ。かつては悪夢にうなされて一睡もできないことすらあったけれど、近頃は少しずつ睡眠時間も増え、いくらかは安らかな朝を迎えることができている。 頭…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
無二の宝物
「そういえば……最近、とはうまくやっているのか」 いつものごとく、ベレトはおもむろに口を開いた。数節に一度行われる、フォドラを統べる救国王とセイロス教の大司教の会合が一段落し、一旦の休憩に入ったときのことだ。 戦争の終幕とほぼ同時期にディミ…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
遠く離れたあなたへ
※子供がいる---拝啓 ディミトリ ごきげんよう、ディミトリ。ずいぶんと寒くなってきたけれど、そちらはお加減いかがかしら? と言っても、今あなたのいる場所は、季節による寒暖差なんてあまり関係ないかもしれないわね。 今日は星辰の節20日だとい…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
星辰の節20の日
真っ青な外套を翻しながら歩く背中は、初めて彼をまぶたに焼きつけたあの日に比べ、数倍広くなっている。 たくましく育った体にまとう鎧、澄んだ空のような瞳、月の光を反射して煌めく金糸。そのどれもが彼がファーガスの王たる現実を象徴しているかのよう…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
見えない、会えない、どこにもいない
※夢主が死んでる さしものフェルディアとはいえ、亡骸をそのまま置いといたらそう遠くないうちに腐っちまう。……陛下、せめて美しいままの姿でお別れを言って差し上げましょう――シルヴァンの、落ち着き払ったようでいてどこか揺れるような声色が、未だこ…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
小さなわがまま
ふたりっきりで休んでいるとき、ひどく甘えたで蕩けてしまうディミトリのことが好きだ。は今、誰もいない王の私室の中央に鎮座する寝台に寝転がり、愛すべき夫の体を優しく抱きしめている。 ツヤの戻ってきた髪を撫でていると心が安らぐ心地がする。指通り…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀