短編(ダグ)

四人目の家族

※子供がいる---「産後の肥立ちが悪い」なんて言葉は、今までの人生でも何十回と聞いてきタ。それは、たとえばゼークス帝国にいた頃のくだらない喧騒だったり、雑貨屋の店番をしていたときの、なんてことない世間話だったリ。 当時のオレは「ご愁傷さマ」…

あなたのほうよ

「だから無理すんなって言っただロ!」 見慣れた木造の天井を眺めるあたしに向かって、ダグはため息まじりに呆れたような声を出す。 ふかふかのベッドは温かいし、ダグは隣にいてくれるうえ、言葉は少し乱暴でもあたしを気遣ってくれているという、個人的に…

黄金の欠片

 黄金に「誰か」の面影を見た。 その「誰か」が誰なのか、擦り切れた記憶のページをめくってなんとか手繰ってみようとする。おそらく従軍時代の記憶だ。頭の片隅にいるのはもはや顔も朧気になってしまった男であるが、ただ無機質な日々を送るなか、「故郷に…

恋の予感?

 ダグ、と呼ばれてふと我に返る。 手元にあった報告書をぱたりと閉じ、声のほうを振り向けばそこにいたのは家主であるブロッサムだった。 相も変わらず穏やかな笑みをたたえるそのすがたに、ちくりと罪悪感が刺激されてほんの一瞬だけ顔をしかめる。 ――…