何かが崩れる音がした
あの日以来、アッシュには一度も会っていない。理由はちっともわからないが――否、もしかするとわからないふりをしているだけかもしれない――あれからいっさいの音沙汰がなくなってしまったのだ。 とはいえ、それもただ「アッシュが我が家に来なくなった…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(過去編) 細氷に光る懐刀
ちくちく、ぴりぴり
アッシュの家は、同じ町のはずなのにずいぶん離れた場所にあった。私が想像していたよりも遠いところに彼のお城は建っていて、毎度ここから来てくれているのかと思うと、少しばかり罪悪感が湧いてくる。 しかし、一家で住んでいたにはずいぶんちゃちな造り…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(過去編) 細氷に光る懐刀
まばゆい記憶
アッシュはきっと、本来ならば薄くかがやく瞳を持っている人なのだろうと思う。置かれている境遇のせいで暗く濁っているだけで、元来はもっと眩しく、清らかな人間であるのだろうと。 私は、一度でいいからまばゆいアッシュのすがたを見てみたいと思ってい…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(過去編) 細氷に光る懐刀
君と広がる世界の果てへ
「それじゃ、。お母さんは出かけてくるけれど、くれぐれも外には出ないようにしてちょうだいね」 母は私が何か言うよりも先に出て行った。 いつもそうだ。あの人は結局私の意見など露も求めておらず、ただ自分の都合を押しつけるばかりの女である。玄関先で…
ファイアーエムブレム 君との軌跡(過去編) 細氷に光る懐刀
ふれあいの袖
気配を消すのは得意だった。 存在を悟られぬよう、息を殺して日々を過ごした。自分なんかいないものだと、誰にも自分を知られぬように、母の手を煩わせぬように。自分が大人しくしていると、母はなんとなく機嫌が良かった。 別に彼女に何か感情を抱いてい…
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