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彼女に見える向こう側(ディミトリ)近親愛

俺は、彼女にいったい何を重ねているのだろう。死んでしまった先生か? あの憎らしい敵の顔か。わからない。彼女が何も言わず拒まないのを良いことに、俺は日夜彼女に対して無理を強いてしまっている。本当ならもっと真っ当に、優しく、たったひとりの女性と…

あれは運命の分かれ道(ディミトリ)近親愛

不思議な女だと思った。初めて青獅子の学級の教室に入ったとき、初めて彼女の隣に立ち、初めてその存在を知った。どこか陰りがあるような、けれど儚げと言うにはそぐわない、そんな彼女と、あの日に俺は出会ってしまった。目で追ってしまうのはなぜだろう。声…

あなたがそこにいるだけで(ディミトリ)近親愛

私は――私だけは、自分が何者なのかを知っている。なぜここにいるのかも、おのれがどれほどの愚か者なのかも。叶うわけもない恋に身をやつす馬鹿な女を、罵ってくれる人がいないことも。それでも私はここにいたい。ただここで、この士官学校で過ごすほんの少…

朝のひと時は(ククイ)

「ククイ博士、おはようございます」 ポケモンスクールの門を潜り、職員室にて顔を合わせる。愛しいその人はこちらを窺うと白い歯を見せて笑い、いつもと変わらぬ挨拶をくれた。「おはよう、マドカ。今日もよろしく頼むな」 職員椅子に深く腰掛け、受け持つ…

背中を見ている(リーリエ)

陽の下へさらされたうなじに、じわりと汗が滲んでいた。つややかなポニーテールの隙間から覗くそれを目に入れ、ぼくはお嬢さまへ日傘を差し出す。かつて奥さまから贈られたそれはお嬢さまのお気に入りの品であり、足元が影に覆われたことと日傘の形を意識の内…

無題(センリ)近親愛

血というものが憎かった。それが愛しくて嫌だった。この身に流れる半分があの人のものである事実、もう半分は違う女。それはひどく甘美であり、苦痛でもあり、2人をつなぐ証でもある。流れる赤が惜しくて嫌いだ。だからあたしはいつも恐れる。体に赤があるこ…

無題(グラジオ)

「愛おしい」という言葉はあなたのためにあるのだろう。わたしの心が震えている、あなたを見るたび叫び出す。あなたの声が、吐息が、空気が、瞳が、血が皮が骨が毛が、それらすべてが在るだけなのにわたしは胸が痛むのだ。あなたのすべてがほしくなる、浅まし…