背中を見ている(リーリエ)

陽の下へさらされたうなじに、じわりと汗が滲んでいた。つややかなポニーテールの隙間から覗くそれを目に入れ、ぼくはお嬢さまへ日傘を差し出す。かつて奥さまから贈られたそれはお嬢さまのお気に入りの品であり、足元が影に覆われたことと日傘の形を意識の内へと入れたお嬢さまは、ぼくを振り返り「ありがとうございます」と微笑んだ。真っ白なお嬢さまにこのアローラの陽射しはさぞやキツいことだろう。けれども彼女は歩くのをやめない。進むことを迷わない。一歩一歩を踏み出す強さを彼女はその手に抱いている。だからぼくは支えるだけだ。それに付いていくだけなのだ。いつかあなたの王子さまが現れるそのときまで、せめてあなたの近くにいるのは、このぼくだけであってほしい。そんな浅ましい願いを胸に秘めながら、ぼくは彼女に微笑み返した。