Spike Love

チャンピオン・マサルの目撃情報

「いえ、れっきとした恋人ですけど」 臆することなく答えるマサルに、マイクを差し出すインタビュアーは目を見開いて呆気にとられていた。 もちろん彼女だけでなく、背後でカメラを構えたカメラマンや、若きチャンピオンに黄色い声をあげるギャラリーの群れ…

大丈夫だよ、ここにいるから

 ねえ、。ちょっとだけ体貸して――言うやいなやのマサルが背後から覆いかぶってきたのは、なんてことない昼下がりのことだった。 突然襲うずっしりとした重みに面食らうも、しかし、がそれを撥ねつけるようなことはなかった。ただ静かに彼を受け止め、おだ…

湯けむりの奥

 ――するり。 細い肩に指をすべらせてやると、くすぐったそうに身をよじる。少し前ならなにするの! と怒られていただろうに、ここ数年でぼくの突飛なスキンシップにもすっかり慣れてしまったようで、過剰に拒否されるようなことはなくなった。 少しだけ…

ハートアメざいく

「――ん、うん。わかった」 どこかくすぐったそうに肩をすくめるその姿には、「あのダンデを打ち倒した稀代の新チャンピオン」という謳い文句で日夜騒がれた際の威厳や風格など、微塵も感じられなかった。 もちろんそれは彼をくさした印象ではなく、まだま…

break time

※数年後設定 ---  チャンピオンとなって早数年。ぼくは利便を考えて、つい最近ナックルシティに引っ越した。 そらとぶタクシーといった交通手段こそあるが、それでもやはりチャンピオンの職務というのは思っていたより何倍も忙しく過酷だ。ひどいとき…

こんなにもひかる

 ステージの上で声を張り上げるネズさんは、普段の辛気臭そうな姿とは打って変わってきらきらと輝いて見えた。 どこか後ろ向きで切なくもある、けれど胸を打つような歌詞にあわさるのはかき鳴らすようなメロディで、コーラスとして参加しているタチフサグマ…

あいしてる!

 ラテラルタウンでカセキをもらった。ワイルドエリアで拾ってもきた。今の手元にあるのはいびつな複数のカセキで、これらをどうするべきか考えあぐねた結果、ポケモンセンターにいたトレーナーにもらったアドバイスを参考にしようと思ったのだ。 ――6番道…

お嬢様ネットワーク

「ねえ……さんって、スイーツは好き?」 それは、ひときわ賑わうカフェでのんびりしているときのことだった。お気に入りのモモンソーダに舌鼓をうっていたマリィは、あ、と思い出したように声をあげたあと、そうしてぼくに訊ねてきたのだ。 立派なバニラア…

ちぐはぐな二人

「ネズとマリィは本当に仲が良いよね~」「まあ……否定はしませんが。羨ましいならおまえもと仲良くすればいいじゃないですか」「え、なんで?」「は?」「冗談はよしてよ、なんでぼくがあの子と仲良くしなくちゃいけないんだい? ……まあ、あの子がマリィ…

踊れや躍れ

 たたん、たたん、たん、たたん。スパイクジムのバトルフィールドに、リズミカルなタップダンスの音が鳴り響く。 軽快なステップを追う瞳は爛々と輝いていて、興味津々といった具合に思わず両の頬が緩んだ。ついさっきまでジムリーダーとして鋭利なバトルを…

うらやまぬ光

 数週間前、とうとうネズはスパイクタウンのジムリーダーに任命された。 その件について何か異議や文句があるわけではなかった。むしろ正当な評価であるとすら思うほどで、リーグスタッフの決定も、それに頷いた彼自身も、ぼくにとっては納得と言うほかない…

メリーメリー、クリスマス

 バウタウンにあるシーフードレストラン防波亭は、オールシーズンどこをとっても賑わうような人気の店だ。 かつてジムチャレンジ真っ只中だった頃に素通りしたこの店へ、よもや今頃になって訪れることになるとは果たして誰が予想しただろうか。潮の香り漂う…