三度目の正直

三度目の正直

「犠牲」を視野に入れた頃から、ずっと脳裏に染みついて離れなかったものがある。数多あるそのなかのひとつこそが、他でもないの存在だった。 置いていかれてしまった自分にも、置いていく存在ができてしまった。置いていかれる者の苦しみを、他でもない自分…

今すぐにでもこの首を

 正直なところ、彼女には二度と会いたくないと思っていた。 決して嫌いなわけではない。ただ、彼女の近くにいると様々なものがぐらつく気配がするのだ。無二に等しい同族はアベンチュリンに苦痛ばかりを連れてきて、やがてそれは苛立ち――否、やるせなさと…

僕はそうでもないけどね

 権力者にしてはやけにこじんまりとしたこの屋敷の主は、実際のところ彼――バールではなく、娘のであるらしい。 この家は彼女のために用意した別邸であるのだそう。道理でやけにシンプルな造りをしていたわけだ――そう納得する傍ら、アベンチュリンの瞳に…

バラと蜂蜜

 バラ色の絨毯を踏みしめながら歩く屋敷内は、噂に違わぬ品性を保った造りをしていた。これだけの資産があれば大抵の人間は華美なインテリアをここぞとばかりに飾りつけるものだが、どうやらこの屋敷の主はその法則に当てはまらないらしい―― 彼がスターピ…