カウンター

「セキはさ、ヨヒラを束縛したいとかされたいとか、そういうのってないの?」

 突然ぶっこまれた爆弾に、セキは思わず飲み物を吹き出しそうになった。
 彼が手にしているのは、行きつけのきのみジュース屋の新商品である「モモザロンジュース」だ。モモンのみのあまさがザロクのみのからさを和らげ、独特の味を飲みやすくしている。
 これならヨヒラも飲めるかもしれない――賑わう店内でそんなふうに考えていた矢先だったので、その驚きはひとしおだ。大袈裟なくらい咳き込むセキを、サワはどこかおかしそうな様子で眺めつつ、背中を何度かさすってくれた。
「ご……ごめんね? まさか、そんなになるとは思わなくて」半笑いでそう告げるサワに、腹の底で悪態をつく。「人に質問する前にまずはおめえが答えろや!」と。 

「ちなみに言っておくと、俺は彼女に束縛されると嬉しいタイプだよ」

 ――こいつ、やっぱりエスパーなんじゃねえか? 涼やかに畳みかけられて、もはやにらみつけることも忘れそうになった。はみ出そうになった言葉も咳のあいまに消えていく。
 ヨヒラの兄であるサワは、セキにとって親友とも呼べるくらいの相手である。年齢はサワのほうが少し下だが、関わる機会が多いこともあってお互いのことはよく知っていた。……否、知りすぎていると言うべきか、サワは時にセキの図星をつき、彼の考えていることをぴたりと当ててくるのである。今がまさにそうだろう。
 深呼吸を繰り返してなんとか呼吸を落ち着け、前かがみになっていた体を起こす。眉間にシワを寄せたままサワを見ると、彼は相変わらずにやにやと笑っていた。
「おめえってやつはよ――」苦々しい顔で口を開くと、サワは肩をすくめながら気まずそうにこちらを見てくる。

「彼女に束縛されると嬉しくない? そんなに俺のこと好きなんだって思えるというか」
「そんなんだから刺されそうになるんじゃねえのか? 忘れねえぞ、先月おめえがウチに駆け込んできたときのこと」
「うっ――」

 痛いところをつかれたのか、サワはあからさまに言葉をつまらせ、うろうろと視線をさまよわせはじめた。ざまあみろと舌を出してやると、今度はムキになって眉をつりあげてくる。その表情はどこかヨヒラに似ている気がして、彼らが兄妹であることを再確認させられた。

「……もうひとつちなみに、だけど」
「おう。なんだ?」
「俺の目から見て、セキは結構束縛が激しいと思うよ」
「ハア!?」

 サワのカウンターはセキのきゅうしょにあたり、彼を著しく取り乱させるのであった。

 
 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『束縛されたい』です
https://shindanmaker.com/613463
なお本人は不在
2025/12/01

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