※龍ファク特大バレ有
※擬獣化要素有
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「最近、新しい家族とはどうだ」
カフェの雑音をすり抜けて、凛とした声が耳に滑り込んでくる。ヒルダの正面に座るクラリスは洗練された所作でティーカップを手に取り、そのまま口元へと運んだ。紅茶を味わうために伏せられた瞼は美しく、その些細な振る舞いからも彼女の育ちの良さが見て取れる。
「ええ……二匹とも元気にしているわ。最近はやっとうちにも慣れてきたみたいで、少しずつ性格の違いも見えはじめてきたの」
「そうなのか? 二匹が双子なのは聞いているが、そこまで気性が違うものなのか」
「そうね、それに関しては私も驚いているのよ。ハウンドはイタズラっ子ですぐに私の邪魔をしてくるし、フブキはフブキでものすごく寂しがりだから、お風呂とトイレのときくらいしか離してくれなくてね――」
言いながら、ヒルダは愛おしい家族の顔を思い浮かべる。
双子の子犬を飼いはじめてから、そろそろ一ヶ月が経とうとしていた。ずいぶんと家に馴染んできたらしい二匹は、毎日のように新たな発見を与えてくれる。最初はどうなることかと思ったものの、どうやら二匹ともそれなりに懐いてくれているらしく、その具合が顕著にあらわれるのが外出の直前だ。
今日もそれを目の当たりにしてきた。二匹はヒルダの出かける気配を感じ取るたび、執拗に足元にまとわりついて外出を阻止しようとしてくるのだ。子犬用の柵を抜けて玄関まで行くと、フブキだけならまだしもハウンドまできゅうんと鳴き出すのだからたまらない。はねっかえりで少々気難しい黒犬であるが、所詮子犬は子犬なのである。
瞼を閉じると、玄関扉の隙間から見えた、二匹のしょぼくれた背中が浮かんでくる。……ああ、今すぐ会いたくなってきたな。引かれた後ろ髪が突っ張ったままのおのれを自覚して、ヒルダはそっとクラリスの様子をうかがう。彼女は依然として子犬に興味津々だ。
「――そうだわ。クラリスがよければだけれど、このあと家に来ない?」ヒルダの提案に、クラリスは澄んだ碧眼を爛々と輝かせた。薄氷の瞳は途端に空の色へと変わり、彼女の純粋な心根をさっぱりとあらわしている。
「いいのか……!? ……ああ、それなら何かお土産を買っていこう。子犬用のおやつとか、何か、おもちゃとか……!」
「慌てなくても大丈夫よ。……でもそうね、そろそろドッグフードを買い足そうと思っていたから、少し買い物して帰りましょうか」
「ああ! ……よし、そうと決まれば――」
言いながら、クラリスはオーダーしていたケーキをせっせと食べはじめる。もちろん掻き込むようなことはしないし、きちんと味わって食しているようではあるが、それでも普段の彼女に比べると何倍も急いでいるように見える。
「喉につまらせないよう気をつけなさいね」子供っぽい素振りを見せる友人に声をかけつつ、ヒルダもガトーショコラの最後のひと口を放り込む。大好きな人と大好きな存在たちの邂逅に、人知れず胸を躍らせながら。
#novelmber 1.瞼
2025/11/12
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