もうダメ、かも

 最近、マサルの様子がおかしい。
「おかしい」と言うのは不適切だろうか? 普段通りと言えばそうなのだけど、なんだかいつにも増して甲斐甲斐しいというか、妙にわたしのことを気にかけてくれている気がするのだ。
 わたしが疲れてソファに吸われていると、そのまま休ませようと毛布をかけたり、時には抱っこで寝室まで運んでくれたりする。ヨクバリスとケンカしたときはよっぽどのことじゃない限りわたしの肩を持ってくれるし――最終的にわたしが怒られる羽目になったことももちろんあるのだけど――、兎にも角にも、なんだかやけに甘やかされているような現状だ。
 もちろん、嬉しい気持ちは嘘じゃない。マサルがわたしのことを想い、尽くしてくれているのはとても光栄なことだけど、時おりあまりにも優しすぎて少々むず痒くなってしまう。
 今日だってそうだ。マサルは、たまの休日に何をするでもなく、わたしと二人きりで過ごすことに使っている。チャンピオンともあろう人が、せっかくのお休みをこんなことで消費してしまっていいのだろうか――耐えかねたわたしは、隣でリラックスしているマサルへと問いかける。

「ねえ……マサル、最近なんか変じゃない?」

 わたしが訊ねると、マサルは熱心に目を向けていた本を閉じ、ゆっくり視線を移してくる。一連の動作から彼の真意を読み取ることはできなかったが、その不明瞭な視線を見つめ返すことができるのは、わたしたちが少しずつ歩み寄ってきたがゆえの成果だ。

「変って……そう? ぼく、何かおかしいかな」
「おかしいっていうか……なんか、このところすごく甘やかされてる気がして」
「好きな子に優しくしたいのは当然でしょ」
「それはそう……かも、しれないけど――」

 言いかけて、わたしは言葉を切らざるを得なかった。息がかかるくらいの距離まで、マサルか顔を近づけてきたからだ。
 日夜ガラルの行く末を見つめている茶瞳の奥には、自信なさげな女の顔が映っている。

「『わたしなんかに時間を割く必要なんかないのに』って、そんな感じのこと思ってる?」
「う……」
「図星だね。……いいんだよ。ぼくがチャンピオン業の次に時間を割きたいのはリナリアのことだから、むしろ最高の休日の過ごし方なんだよね」

 だから、いいでしょ――返事をする前にくちびるを塞がれ、わたしはもう何も言えなくなってしまった。
 結局マサルの真意はわからないままだったけれど、それでもいいやと思わされてしまうのは、きっと彼によってダメにされたからなのだろうな。

 

×××へのお題は『君を甘やかして駄目にしたい』です。
https://shindanmaker.com/392860
2025/10/06

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