※近親愛
※オリ地方要素
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「今日はだいぶ冷え込んでるな……」漏れ出た独り言を聞きながら、チイロは背中に覆いかぶさってくるずっしりとした重みを受けとめた。知らぬ間にすっかり異性の体になった兄は、いっさいの遠慮なく全身でこちらにもたれかかってくる。
「おもたーい! もう、寒いならバシャーモにくっついたらいいじゃん」
「まあまあ、いーじゃんたまにはさ。バシャーモだって一匹になりたいときくらいあるだろ」
「あたしにはそういう気遣いないわけ?」
「あーもう、うるせえな。言わせんなよ」
オレがおまえにくっつきたかっただけ! そう言いながら、ユウキはチイロのお腹に手をまわしてくる。そのまま思い切り抱きしめられると、不思議と悪い気はしない。……こんな簡単に丸め込まれてしまう自分は、ほんの少し悔しいが。
「も〜、仕方ないんだから……」
肩に擦りつけられる頭をぐりぐりと撫でて、チイロはふうと息を吐く。なんだかんだ、彼と体が触れていると落ち着くのは確かだった。
ユウキの言うとおり、今日はまるで冬のように冷え込んでいる。
カバタ地方は一年を通して春の気候をしているが、年に数回、今日のようにひどく冷え込むときがある。寒暖差に弱い人やポケモンは決まって体調を崩し、いつもより病院が忙しくなるのだと、とある友人が言っていた。
こういった気温の変動はもちろん冷えるだけではなく、時には夏の暑さが訪れたり、秋風が地方を駆け抜けたり……こちらからすればたまったものではない現象だが、カバタ地方の人々はこれらを地方に眠る四季のポケモンになぞらえて「彼らが寝返りを打った」「くしゃみをした」などと言い、受け入れ、愛しているようである。
チイロもまたこの言いまわしをひどく好んでいて、寒暖差で参る反面、今日のような日を心待ちにしていたりもする。
きっと、今日は冬の神様がねごとでも言っているのだろうな――クローゼットの奥からカーディガンを取り出した朝に、そんなことを思ったものだ。
「あったかいエネココア飲む? このあいだ、チャレンジャーさんからもらったんだ」
「飲む……」
「じゃあ準備するね――」
言いながら台所に向かおうとするも、ユウキに抱きしめられているおかげで体はびくともしない。
……はて、これはどうしたものか。再び頭を撫でてやると、肩口からくぐもった声がむにゃむにゃと聞こえてきた。
「エネココアはほしい……けど、今はもうちょい、このままで」
「甘えたい気分なんだ?」
「だから言わせんなって……」
ほんの少しぶすくれた声を聞きながら、チイロは眉を下げて微笑む。
片割れの可愛らしいわがままをそのままに、窓の外に見える景色をぼうっと眺める夕暮れだった。
×××へのお題は『寒さを言い訳にして』です。
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2025/10/05
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